◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL9
  江田島孔明
 前号に引き続き、中国を中心とする「アジア共同体」に対する私見を述べたい。

△ 中国経済の矛盾と罠
 アジア共同体を唱える中国事大主義者達の前提には、中国が経済大国であり、今後も成長を続けるという楽観的見方がある。
 しかし、最近上海に出張した人の話では、建設途上で中断したマンションがいくつか出始めた由。バブル崩壊は既に始まっているようだ。中国経済の矛盾と罠について、検討してみる。

△ アジア太平洋圏の未来
 EU拡大やイラク戦争を見ても分かるとおり、世界はその枠組みを冷戦期のそれから大きく変えようとしている。そのような状況でアジア太平洋圏の未来は、どのようなものになるだろうか。短期的にはアメリカの関与の漸減と中国の影響力増大ということに成ると思う。しかし、中長期的にはむしろ、中国に分裂の危機があるように考える。

△ 中国経済の増大する構造問題
 中国経済の今後を肯定的に捉える動きの反面、最近になって、中国の社会的構造的問題点、矛盾点を抉った著作が次々に出版されている。
 市場としての中国について、ビジネス書のダイアモンドや東洋経済などは中国至上主義をさかんに喧伝している。
 しかし、最近、下記のような、その内在する矛盾を抉った著作があいついで出版されている。
 どちらが正しいのか?おそらく両方ともある面の真実を捉えてるんだと思う。つまり、「市場性と矛盾はコインの両面」ということである。問題はそのバランスが、近い将来崩れたときに何が起きるか・・・

(1)中国現代化の落とし穴―噴火口上の中国 何 清漣 (著),
(2)やがて中国の崩壊がはじまる ゴードン チャン (著)
(3)中国経済 超えられない八つの難題 「当代中国研究」論文選 程暁農 (編集)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794211759/250-1177758-847466
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794210892/ref=pd_sim_dp_2/250-1177    758-8474661
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4794212623/ref=pd_sim_dp_5/250-1177    758-8474661
http://www.rieti.go.jp/jp/publications/summary/03070004.html
http://www.junkudo.co.jp/detail2.jsp?ID=0104313193

 識者の中にはアジアも欧州に習ってEUのような共同体を創設すべきと説く人がいる。しかし、韓国や中国とEUのような枠組み作れば、全ての政策を中韓に握られるだけである。だからイギリス式に通貨批准も無しで、国境も維持する方式もあるが、それでは日本には何のメリットも無い。最大の問題は人の流入に伴う民族問題発生である。
 アジア共同体の是非の検討に際しては、中国が今の経済成長を継続することが前提となる。その前提が正しいのか検証しよう。

△ 中国経済
 中国バブルの破裂は、時間の問題という予測が世界の共通認識になりつつある。
http://contents.innolife.net/news/list.php?ac_id=1&ai_id=24384
http://www.morganstanley.co.jp/securities/jef/wib/040412/doc15.html
 以下は、6月16日日経新聞記事である

△ 中国の過熱投資に減速感、5月は鋼材輸入30%減
 【北京=飯野克彦】鉄鋼やセメントなど中国の一部業種の過熱投資に減速感が出てきた。4月まで前年同月比30%を超える勢いだった固定資産投資(公共投資と設備投資の合計)の伸び率は5月に急低下し、2ケタ増を続けていた鋼材や鉄鉱石の輸入量も5月は一転減少した。政府は昨年来の投資抑制策が効果を表しつつあるとみているが、物価の上昇もあり警戒を緩めていない。
 15日の新華社電によると、5月の輸入量は鋼材が前年同月比30.2%減の213万トン、鉄鉱石が4.3%減の1322万トン、大豆が46.2%減の84万トンだった。中国政府は「マクロ管理政策が初歩的な効果を表し始めた」と評価している。
 国家統計局によると、5月の都市部の固定資産投資額は4390億元(1元=約13円)で、前年同月比の伸び率は18.3%だった。4月の固定資産投資の伸び率に比べ16.4ポイントの低下で、特に紡績・アパレルや非鉄金属、鉄鋼などで伸び率の低下が目立つ。? (記事終り)

 現在の中国政府共産党は、安全保障と社会の秩序維持のため、中央集権圧制支配をしいている。それに反して上海や香港といった沿岸部は、交易による利得を求める。問題は、相対的に発展を遂げる沿岸部と取り残される農村、国営企業、自然環境破壊にさらされる内陸部との矛盾が利害対立を起こし、破綻を迎えないかということである。
 ビジネス誌にも中国が特集されることが多く、いわく「世界の工場」いわく「中国人にいかに売るか」いわく「対中貿易で復活する日本経済」等猫も杓子も中国である。

 トヨタをはじめ日本企業をそこまでを見据えてリスクを取ってるかどうかというところがポイントである。おそらく、結果は近い将来、明らかになるだろう。しかし私は悲観的である。
 私見だが、日本の経営者の多くは、リスク判断が甘いどころか、リスクコントロールという概念すらないと思っている。
 進出時には「皆が進出しているから」「バスに乗り遅れるな」という雰囲気で進出してしまい、撤退時には、「今までの投資が無駄になる」とか、「責任問題になるから」などという理由で撤退できない例が多い。
 これは、まさに、太平洋戦争開戦と終戦の過程そのものである。天下のトヨタは違うと信じたいであるが。

 中国に関しては、19世紀から今日に至るまで、パールバックの「大地」や5000年の歴史あるいは儒教や律令制、漢字といった日本の文化の発生地として、常に羨望の的であるという見方が強く存在した。
 アメリカが19世紀の門戸開放、機会均等を唱えていたことから現在に至るまで中国に過大な支援をしているのも、ある意味でこのような見方に基づいたものであろう。
 しかし、その反面、矛盾が大きく存在し、かつ、中国の歴史は王朝交代の歴史でもあり、分裂と統合そして内乱の歴史でもあった。果たしてどちらの見方が正しいのであろうか。過度の期待や思い入れを排して、冷徹かつ、客観的にこの国の行く末を見据えることが、アジア太平洋圏の将来を見通すことにつながる。

 現状の中国との貿易額を見てみる。下記2004年4月5日の日本経済新聞の記事をごらんいただきたい。
 現在の(4/5)中国、貿易額で世界第4位――03年世界貿易統計、日本に肉薄
 【ジュネーブ=清水真人】2003年の中国の貿易額が日本にほぼ匹敵する規模になった。世界貿易機関(WTO)が5日発表した貿易統計によると、モノの輸出入額は世界第4位、輸入額だけを見ると米独に次ぐ同3位に浮上した。

△ 日本企業の対応
 日本企業の対中投資について、トヨタの例を見ていく。
 浅野健一トヨタ自動車中国部部長は、「グローバル化の競争の時代の企業の戦略:トヨタ自動車の取り組みについて」というテーマで、要旨次のように発言した。
 「中国においては、中国の自動車産業政策にもとづいて、基礎的な部品産業から始めて、すでに中国で六つの会社を設立している。そのうち、天津には部品関係の企業が四社、技術開発会社が一社ある。昨年末には四川省にコースターを製造する合弁会社を設立した。トヨタは、自動車産業に必要とされる人材の育成、部品産業の育成などから取り組み、中国の自動車産業の近代化に協力していきたいと考えている。」

△ 社会的矛盾と経済発展についての考察
 このように、中国については経済発展を楽観視する向きと、その社会的矛盾からいずれは失速、衰退あるいは分裂するという意見が大きく分かれている。断定は困難だが、私は、中国には以下の問題点があることもまた事実であり、こういったリスクを真剣に検証した上で、時機を見た、戦略的撤退を考慮する必要も場合によってはあると考える。
 参考:国際派日本人の情報ファイル『海洋国家日本の21世紀地政学戦略』(1) http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000808.html

△ 為替レートの切り上げ
 現在、人民元レートはドルに固定されている。しかし、長期的には変動相場に移行することを十分、考慮する必要がある。人民元が切り上げられたら、安い人件費といった条件は失われ、日本企業の進出根拠の一つが無くなるからだ。
 日本も85年のG7プラザ合意までは、日本の輸出産業を助けるという、戦後の対日政策の延長で、円を過少評価してもらっていたのであるから大きな声ではいえないが、中国に対する「プラザ合意の可能性」は下記のような背景で考えられる。中国の元切り上げの衝撃は、かなりのものになるだろう。
 @ 米国の対中貿易赤字の拡大などを背景に、人民元切り上げ論が台頭。これを受けて、97年以降、1ドル=8.28元の固定水準で推移している人民元の切り上げ期待が高まり、中国への資本流入が増加している。この結果、中国の外貨準備高は急速に拡大し、2004年3月末には前年比39.2%増の4,398億ドルと、過去最高水準となった。
 A こうした外貨準備高の急増は、中国で国内流動性の拡大と景気の過熱をもたらしている。同時に、急増した外貨準備は米国への証券投資という形で運用され、結果的に米国の貯蓄不足をファイナンスする形となっている。
中国が最終的に狙っているのは、為替を使った、日本の弱体化、日本の根幹をなす「製造業の弱体化」ということだと思われる。 日本では日増しに中小製造業の廃業が進んでいる。工場やそれに伴う技術移転も大手・中小問わずに激増している。
 中国は上海万博が終了する頃までは何が何でも固定レートを維持する。外資を呼び込んで、自分は一切資金を提供せず に他人の褌で金と技術を循環させる。一通り日本など外資の技術移転が一巡し、中国が自他共に「世界の工場」となり、日本で操業してる工場はほんのわずかになったら、為替不均衡是正・世界経済の安定という大義名分で元を一気に切り上る。変動相場制の開始。文句を言う国はない。
 中国に打撃が加わりそうだが、日本にもアメリカにも台湾にも韓国にも工場は無い!中国から買わざるを得ないのだ。高いマージン乗っけて売ることが可能だ。元高になれば、人民の給与も多少UPできるだろう。
老子の戦略、「奪わんと欲すれば、まず与えよ」を地で行く戦略だ。
<参考> ランドパワーの戦略
http://melten.com/BackNumber.cgi?m=10136&s=1

△ バブル崩壊
 以下は朝鮮日報の4月29日の記事である。
 「中国の温家宝首相の景気過熱抑制発言に続く中国銀行の新規融資中断措置により、中国経済のバブル崩壊の懸念が拡散する中、29日には韓国を始めとする主要国の株価が一斉に急落するなど世界経済が衝撃を受けている。
 また、この日の中東産ドバイ原油価格が湾岸戦争直前の1990年10月16日(34.13ドル)以降の最高値である1バレル当たり33.18ドルに値上がりし、ウォン・ドルレートが急騰する一方、内需景気の指標が下落するなど、韓国経済が大きく動揺する姿を見せている。
 この日、ソウル株式市場の総合株価指数は前日より26.42ポイント(2.93%)下落した875.41で引け、4営業日連続の下降傾向が続き、3月30日以来の最安値を付けた。
 コスダック指数も22.66ポイント(4D73%)暴落した456.04を記録、4営業日連続で下落した。この日、日本の株式市場は「緑の日」を迎え休んだが、台湾の加権指数が2.62%も急落し、香港のハンセン指数も1.95%(午後4時現在)下がった。?」

 背景として、米国と中国にはすでに、経済的に密接な繋がりができてしまった。アジアが生産し、米国がアジアからの借金をもとに消費するという、経済原則を無視した経済運営が続いている。
 世界経済は、この両国が牽引しており、この流れに、日本を含めた周辺のアジア諸国がドル圏経済圏を作り上げることで、繁栄を実現していると言える。
 当然ながら、この仕組みを永続させることはできない。さらに、誰もが気になるのが、中国政府が発表するデータだ。曖昧だから、どこまで信用してよいか、わからない。ここのところ、中国への過剰な資金流入が進んでおり、インフレ化の可能性は高い。
 しかし、データからでは、実態ははっきりしない。しかも、政策的に、この爆弾破裂を抑える政策が展開されているのかも明瞭でない。

 当たり前だが、資本主義経済では、オランダのチューリップ球根事件、イギリスの南海泡沫会社事件のように、バブルは必ず発生する。バブルが経済を牽引する効果もあるから、悪い訳ではない。
 重要なのは早目に的確に対処することだ。上手くいくかは別として、政府が常に監視し、ここぞという時に動くことで、マイナスのインパクトを和らげる訳である。しかし、最大の問題は、その見方は中国政府には当てはまらないことだ。
 銀行に、膨大な不良債権問題があるのはよく知られているが、経済好調なので少しづつ問題を解決していると考えていたが、甘いようだ。中国では、モラルハザードが広範囲に発生しているという。しかも、悪いことに、構造的なものである。
 先ず、地方政府が、起業と公共投資を企画する。融資元は銀行になる。しかし、事業の実態は赤字。不良債権化必至(現時点でその規模は「公式」でGDPの4分の1、日本の4倍である。)である。その結果、銀行も赤字に直面するが、この赤字を政府が補填しているそうだ。背後に共産党政府の利権構造があるのは明白だ。
 すでに、中国経済バブルのお蔭で、世界はインフレ化してきた。米国は、膨大に積みあがったドル債の価値を下げるから、インフレを容認しているようだ。
 しかし、いつまでも、インフレ化を放置できまい。中国政府が投資抑制に舵を切れば、ドル圏経済は一気に不況に突入する。上述の発言を見ても、中国政府は、このことを十分理解している。しかし、コントロールする術が無いようだ。政府は銀行に対して融資抑制ができない状態らしい。そうなると、バブルは限界まで膨らむ。ハードランデイングは避けられない訳だ。

 と言うことは、長期的に眠りかねない現物投資は避けざるを得ない。破綻の前に、濡れ手に粟のビジネスでできる限りお金を稼ぐしかない。バブル破裂で貧乏籤を引かされないためには、どうすべきか、熟考が必要だ。このように、中国経済はバブルが大きくなりすぎて、ハードランディングすると言ったシナリオが発生し、元の切り上げなどといっていられなくなる可能性も十分に存在している。
 この時、元の切り下げ等の対策を取らず、アジア通貨危機のときのような痩せ我慢をした場合、どうなるかは不確定ではある。不動産バブルがはじけると金融危機が起こり、それが国有企業の経営危機、財政破綻、大量の資本逃避、外資の流出につながる危険がある。
 日本やアメリカなら3%成長でも「好景気」といってよいが、中国経済は公称の9%(嘘だと思うが)の成長率でも失業率が増え続ける。しかもそのほとんどは不動産、インフラ投資、輸出に頼っているような脆弱な構造であることを忘れてはけない。
 重要な点として、プリンストン大学のポール・クルーグマン教授は10年ほど前に発表した「まぼろしのアジア経済」(『中央公論』、1995年1月号)の中で、「東アジアの奇跡」と呼ばれるようになったアジア各国の高成長が、生産性の上昇より、投入量の拡大によって達成されたものであり、したがって、持続できるのもではないと鋭く指摘した。その後、予言が的中する形で、タイやインドネシア、韓国を中心にアジア経済危機が起こった。すなわち、計画経済的視点に立った、資源の大量、集中投入が、表向きの経済発展を生んだだけであり、実態は投入資源が続かなければ破綻する、自転車操業なのだ。その投入資源は殆どが外資であることを忘れてはならない。生産性の向上には国民一般の勤勉性や民度の高さといった部分が必要だが、中国にはそれがなく、詐欺と誤魔化しがまかりとおっている。

△ 不安定要因の多さ
 さらに、
@ 失業率と貧富の差が非常に大きく、富まざる者の人口が膨大(数億人?)盲流となって、都市部に流入
A 環境悪化により、水とエネルギーのボトルネックが深刻
B まともな社会福祉制度がないため、高齢化に対応できない
C 国有企業や金融部門の改革が進まない
D 経済の外資依存度が高すぎる(輸出の半分は外資系)
E 技術レベルが低く、国際競争力のあるソニーやホンダに相当する国内企業(外資除く)はない
F 一党独裁により、汚職の浄化機能が働かない
G 法治でなく人治、ルールが突然変更される
H 米国、日本、台湾など投資と貿易相手国と多くの摩擦、安保問題を抱えている
I 農村や内陸部の改革が進まず、膨大な不良債権と化している
J 日本や先進国との間で人の移動自由化は民族問題、犯罪発生を生むため不可能
K 勤勉や謙譲の精神がなく、誤魔化しと詐欺が日常茶飯という民度の低さから、製品品質に問題がある。
L 共産党に睨まれたら、政治リスクによる資産差し押さえがありうる。

<参考> 「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
 平成16年(2004)6月10日(木曜日)通巻 第845号
「人質外交」を北朝鮮より巧妙に展開する中国
  台湾奇美実業いじめに見る近未来のビジネス俯瞰図
http://melma.com/mag/06/m00045206/a00000653.html
 「許文龍は「独派大老」だ、と言うのだ5月31日、人民日報が名指しの非難を開始する。「緑色台商」である許文龍は「独派大老」だ、と言うのだ。「緑」は民進党のシンボル、台湾与党を意味する。台商というのは大陸へ進出した台湾企業、その経営者を意味する。そして「独派」とは「台湾独立支持派」であり「大老」とはいうまでもなく大ボスである。
 3月20日の台湾総統選挙で、「台商」の多くは国民党支持を鮮明にした。 いや、せざるを得なかったと言うべきだろう。かれらの本心はともかく中国大陸で大々的なビジネスを展開する以上は、北京に阿諛追従しなければならないからだ。
 台湾プラスチックの王永慶、エバグリーンの張栄発など国際的ビジネスマンらがその代表格で、そのうえ、投票日までに大陸在住20万人の台湾企業幹部は「国民党に投票するために」一時帰国すると喧伝された(実際には五万人前後が帰国したものの、本当に国民党に入れたか,どうかは疑問である)。
 6月6日、北京は許文龍率いる奇美実業の大陸における工場に新たな銀行貸し出しを認めず、事実上の閉鎖ともとれる制裁措置を発表した。」
 このような、内外の不安定要因を多く抱えている。
参考)国際派日本人の情報ファイル  地政学大変動時代
 EUを滅ぼす『ユーラシア連合』という悪夢(3)
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000799.html

△ ランドパワーは高コスト体質
 さらに、中国に代表されるランドパワー国はその国境防衛のための軍事費コスト、あるいは内陸部や農村のインフラ整備、維持コストそして膨大な人口や独裁政府の維持コストが企業に賦課されるという構造をもつのだ。
 このコストは、版図や人口に比例する。ロシアでも大差ないだろう。ランドパワーの構造的問題だ。日本企業は対中投資にあたって、ランドパワーの本質を理解する必要がある。
 歴史的、構造的さらに環境の観点から考えても、中国の経済発展は膨大な不安定要因に相殺され、いずれ失速していくと考える。経済発展と不安定要因のバランスがいつ崩れるかを注視する必要がある。既に北京などの都市部では、失業者や農民のデモが行われているという。
 中国史を見ると、時の政権が衰退すると必ずこのような民衆による乱が起きていることを忘れてはいけない。共産党政府高官はこれを予測しているらしく、子弟を海外に移住させたりしている。また、優秀な中国人であればあるほど、日本やアメリカに移住する傾向がある。
 さらに、本質的に見て、近代そして、現代の根源的価値とは何かというと情報(ソフト)の支配だ。土地支配はあくまで中世の価値なのだ。英国が小さな島国ながら世界帝国を築けたのはこの情報を支配したからだ。中国はそのランドパワーの性質上、膨大な版図を維持するため、高コスト体質であり、そこのこと自体が、衰退や内部崩壊の要因なのだ。
 ランドパワーが経済発展できない本質的問題はこの版図支配維持管理コストの高さだ。これは、旧ソ連の崩壊が参考になる。このような観点から、上海や香港といったシーパワーがいつまで北京の支配に従うか分からない。そこが最大の問題なのだ。
参考)海洋国家日本の21世紀地政学戦略
 自由台湾独立と中国分割解体の地政学
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000820.html
http://www.melma.com/mag/56/m00000256/a00000826.html
 冷徹に見れば、中国は外資の経済植民地に過ぎず、自前での資本の集積ができず、投機に走ってバブルを生んでいるだけということがわかる。外資が何らかの問題で撤退に走れば、見るも無残な状況になるだろう。

△ 日本企業のリスクマネジメント
 日本企業には中国ビジネスで出遅れてるいところは多い、あるいは、欧米の経営者に比べて、1980年代の中国投資ブームの経験から二の足を踏んでいる、という分析もある。このようなリスクが存在する中国市場に対して、日本企業はいかに向き合うべきか。
 はっきりいえることは、日本の企業や経営者の多くは、リスク判断が甘いどころか、リスクコントロールという概念すらないということだ。進出時には「皆が進出しているから」という雰囲気で進出してしまい、撤退時には、「今までの投資が無駄になる」とか、「責任問題になるから」などという理由で撤退が遅れがちになる。
 これは、太平洋戦争開戦にいたった過程(バスに乗り遅れるなといってドイツと同盟)と、終戦を決断できなかった経緯と全く同じだ。
 よって、日本人は中国市場の幻想を捨て、投資を勧誘する時は甘言を弄し、いざ利益を上げると、言いがかりをつけて課税するという慣行がなくなるか、構造的問題を理解し、冷徹にビジネスチャンスと撤退の時期を判断する情報をもたない限り、手を出すべきではないと考える。
 先物取引と同じか、それ以上のリスク管理が求められるのだ。あるいは、投資は行わず、その都度決済できる貿易にのみ限れば、傷は浅くて済むだろう。

△ 中国経済圏
 日中韓+ASEANで共同の経済圏を作るという動きには注意が必要だ。EUがドイツの金を搾取するシステムだったのとおなじく、政策決定を中韓が行い、日本が金を負担するという仕組みになるのは目に見えている。
 中国側はそのような意図を隠して、甘言を弄し、日本を取り込もうとするだろう。日本はこの枠組みに決して入ってはならない。上述のような脆弱な体質をもつ中国中心の元経済圏と心中するのは韓国だけで十分だ。

△ 米中開戦
 私の過去のコラムを読んでいただければ、東シナ海が一触即発であり、世界的にも戦国時代に入ったことが分かると思う。ニューズウィークの下記記事もこの考えを裏書するものだ。アジア共同体の幻想を捨て、冷徹に現実を見つめる必要がある。
<参考> 6月23日発売号  中台開戦5秒前
 アメリカから台湾への武器大量売却に中国政府は激怒。侵略阻止へ台湾が三峡ダムを先制爆撃する可能性も指摘されるなか、事態はもはや一触即発の危機に  http://www.nwj.ne.jp/
 行政調査新聞  中台海峡異変あり!! ―極東アジア大戦乱の前触れか―
2年後に支那が台湾侵攻開始!
http://www.gyouseinews.com/international/jun2004/001.html  以上
(江田島孔明、Vol.9完)



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