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◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL18
 江田島孔明

 今回は予定を変えて、ロシアで起きた学校テロの背景と今後の推移を考察してみたい。ロシア南部北オセチア共和国の学校占拠事件は、少なくとも子どもら320人以上が死亡するという最悪の結果となった。ロシアでは、今年だけでもモスクワの地下鉄の2度の自爆テロ、旅客機爆破などテロが相次ぐ。犠牲者には心から哀悼の意を捧げる。

△ チェチェンは部族社会
 思うに、この学校テロは私が以前から指摘している、狡猾、残忍、獰猛なランドパワーというものの本質を良く示していると考える。チェチェン共和国は四国とほぼ同じ広さ。イスラム教スンニ派が多数派であり、「親族、知人で結ばれた部族社会で、ここにスパイを送り込むのは至難の業だ。ロシア側に寝返ったチェチェン人を二重スパイとして放とうとしても、発覚すれば一族もろとも殺されるという厳しいおきてがある」(軍事評論家の神浦元彰氏)ため、ロシア側の情報入手をさらに困難にしている。
 アメリカのイラク戦争についてもいえることだが、ロシアはこのような典型的ランドパワーであるチェチェン部族社会と宗教戦争を行っているとみるべきだ。このようなランドパワー同士の宗教戦争を勝利するには、相手の「根絶やし」しかないことは、織田信長の一向一揆に対するやり方をみてもわかる。
 逆に、「根絶やし」に失敗すれば、かっての十字軍が、短期的には占領したエルサレムを結局は手放して撤退せざるを得ないように、ロシアやアメリカはハートランドから手を引かざるを得なくなる。そして、今回の学校テロに見られたような「交渉を拒否した残虐行為」は、今までの政治的要求をのませるためのテロとは異なっており、「凄惨な殺戮によりメッセージを伝える」ということなのだ。背後に国際テロ組織の関与も疑われている。
 チェチェン問題は、次のステップに移行したとみるべきだろう。この「凄惨な殺戮によりメッセージを伝える」は、十字軍の頃からソ連のアフガン侵攻のころまで、イスラム教徒が取ってきた抵抗戦術だ。アフガン派兵のソ連兵は、捕虜になったら間違いなく殺されていた。死体を送り返され、それを見た仲間はノイローゼになっていったのだ。こうやって、ソ連軍は徐々に損耗していった。今回のような学校テロを含む残虐行為が続けば、ロシアは国として疲弊していくだろう。いまのイスラエルのように。学校テロで判明したことは、彼等のテロには最早、制限が無く、今後は幼稚園や病院などを含む、社会的に弱い部分が狙われ、それらのテロを防ぐことはできないということだ。
 そして、さらに重要なことは、アルカイーダの関与が事実なら、同じことが欧州やアメリカでも起きうるということだ。まさに、世界は新しいテロの時代、もしくは戦国時代に入ったといえる。

<参考>
 【ロンドン6日時事】ロシア南部の北オセチア共和国で起きた学校占拠・人質事件で、国際テロ組織アルカイダの関与が疑われることから、ロシアだけでなく欧州全体で危機感が高まっている。一部報道によると、同事件を指揮したとみられるチェチェン共和国の独立派武装勢力は、アルカイダと連携して欧州域内で新たなテロ攻撃を企てているとされ、チェチェン紛争が周辺地域を越えて欧州に飛び火する可能性も指摘されている。

△ 根本原因
 世界史的視点から見ると、イラク戦争とチェチェン戦争は同根であり、キリスト教文明圏 vs イスラム教文明圏 の再発といった図式になったといえる。その根底には、歴史的に見て、農耕民族 vs 遊牧騎馬民族という凄惨の死闘の図式がある。この戦いこそは、人類史上一度も決着がついたことのない半永久的な民族抗争であり、ランドパワー同士の歴史的対立の再燃だ。
 白人は、かってはゲルマ二アの森で狩猟採集生活(タキトゥスのゲルマニア参照)をおくっていたが、ここ二千年の間にすっかり農耕民となり、地球上の土地という土地をほとんど耕し尽くして定住生活をおくるようになった。ちなみに欧米でこの定住生活をおくらず、騎馬民族的生き方を持続したのはユダヤ人だけだ。
 遊牧騎馬民族というのは、この全人類が農民化されてしまう課程で誕生した反農耕民族であり、そのモノの考え方や合戦のやり方などはまったく異なる。彼等は、元来、定住民族ではないので、故郷だとか、祖国だとかという観念を持たない。このため、陣地をつくって、その拠点を基軸に作戦を展開する農耕民的な合戦は、彼等には通用しない。
 ちなみに、彼等のアイデンティティーは故郷とか祖国といった土地に根付いたものにはなく、「宗教」そして部族としての「人間的繋がり」を精神的なバックボーンにしている。羊たちを食わせるための草原を生命の源泉と考え、その草原をほじくりかえして畑にしてしまう農耕民族を、諸悪の根元ととらえている。
 農耕民族が遊牧騎馬民族と対戦して、これに勝利することは、近代の産業革命に至るまでは、ほとんどなかった。前漢の霍去病が独創的な騎兵戦を展開して匈奴の王を捕虜にしたが、これは、例外。ちなみに、その霍去病の脅威は、匈奴に玉突き現象を起こさせ、西に移動した匈奴に押されたゲルマン民族が大移動を開始し、ローマ帝国をうち砕き、東ローマ帝国を誕生させた。匈奴の支流は、さらに、セルジューク・トルコの大帝国を打ち立てたり、オスマン・トルコの大帝国を打ち立てたりした。現存するアラブ人も、この匈奴の末裔。
 また、騎馬民族は、農民のような生活への執着心が薄く、勇猛果敢で部族の誇りのためには死をも厭わない。このため、彼等は農民のひ弱さを理解できず、農民を同じ人間として評価せず、ランクの低い動物と見ていた。
 紀元前8世紀ごろに現れた最初の遊牧騎馬民族は、年に一度の大会(全部族が集うお祭り)のために、殺した農民の頭の皮をナプキンにして胸に飾り、その数を競い、一枚もナプキンを下げてないと、みんなから臆病者の烙印を押された。
 その残虐性は、ソ連がアフガン侵攻をやったときにも発揮され、ソ連兵は皆捕虜になることを恐れるあまり手榴弾を身体に括り付け、いつでも自爆できるようにしていたという。
 ちなみに、霍去病が匈奴を討伐できたのは、敵のやり方を応用したからだ。当時の中国では、馬にまたがるというのは、非常に下品な行為とされていて、だれもそれをしようとしなかったのだが、戦車(車を馬に引かせる形式のもの)では勝てないということを認め、騎兵を使ったところが勝利につながったようだ。なりふりかまわず、下品だろうがなんだろうが、有効な手法は全て取り入れる心構えがなくては、異民族には勝てない。
 すなわち、米露キリスト教国が勝利するためには、霍去病に習って、イスラムテロリストに勝る「残虐行為」を取り入れることが必要であり、現時点でそれは「核使用」を意味するだろう。これが、ランドパワーを制圧、支配する唯一の手段だ。

△白人の恐怖と憎悪
 アメリカやロシアが、中東やカフカスといった、ユーラシアハートランドの支配を狙う真の理由は何なのか。石油を始めとする天然資源の獲得という見方もある。それも理由の一つであろう。しかし、真の理由は「イスラムの人口圧力」ではないかと思われる。欧米露の最大の社会問題とは、国内におけるイスラム人口の増大だ。ロシアがCIS諸国を旧ソ連から分割し、独立を認めた背景はこのイスラム人口増大への懸念、そなわち、このような遊牧騎馬民族たるイスラムの人口圧力に対して、欧米露の白人そして、イスラエルのユダヤ人は恐怖を覚えていると見るべきだ。
 そして、イスラムテロリストの目的が単なるチェチェンの独立ではなく、ロシア南部にイスラム原理主義国をつくることであるなら、ロシアとの間に一切の妥協はなく、凄惨の死闘が展開される。

<参考>
 【エルサレム1日ロイター】イスラエル中央統計局が1日発表したところによると、国内の子どものほぼ4人に1人がイスラム教徒で、アラブ人の人口がユダヤ人を追い抜く可能性があるとする、ユダヤ人の懸念が浮き彫りになった。
 同局が2002年の統計に基づいて算出したところによると、16歳以下の子どもの24%がイスラム教徒、71.1%がユダヤ人、残りは他のアラブ諸国出身または不特定の外国人だった。
 同局は、アラブ系イスラム教徒の出生率が記録的な高水準になっていることを取り上げ、「近年のイスラエルにおけるイスラム教徒の年平均出生伸び率は、ユダヤ人の1.4%の2.4倍に当たる3.4%となっている」と述べた。
 イスラエルのイスラム教徒は、総人口660万人中18%を占めており、ユダヤ人を人口の多数派として維持したい政府は、イスラム教徒の急速な増加に懸念を強めているという。(ロイター通信 2004/02/02)
 前号までで、中東で核戦争の脅威が顕在化していることがお分かりいただけたと思う。次号では、歴史的にみて、ハートランド地域の制圧には大量殺戮すなわち、被支配勢力の「根絶やし」が必要であり、そのため、現代においては、「核使用」は論理的帰結であることを見ていきたい。
 私は核使用を支持するものではないが、現時点で泥沼の中東情勢を挽回する切り札として、核しか残されていないように思える。今回の学校テロはそのような動きに拍車をかけるだろう。どう考えても小学校へのテロなど、一線を超えているとしか言いようが無い。そして、その核使用が新たな地獄の扉を開くのだが・・・

<参考>
 露の学校占拠  国際テロ組織「主導」 プーチン大統領“宣戦布告”
チェチェン強硬派とは別? イスラム国家建設狙う
 【モスクワ=内藤泰朗】死傷者約千人という大惨事となったロシア南部、北オセチア共和国の学校占拠事件は、同国南部一帯にイスラム国家建設をもくろむ国際テロ組織が主導していたことが明らかになってきた。プーチン同国大統領はこれを受け、四日、国際テロに宣戦布告した。「ロシアの9・11」ともいえる事件は、同国の反テロ戦争への姿勢を大きく変える分水嶺(ぶんすいれい)になりそうだ。
 事件を引き起こした武装集団の人数は、ロシア特殊部隊の突入から二日以上がたったにもかかわらず、はっきりしない。
 検察当局の発表では、犯人のうち二十六人が死亡。共犯者とみられる男女二人が逮捕されたほか、四人が逃走中との情報もあり、最終的には三十人以上になる可能性がある。
 ただ、死亡した犯人の実に三分の一以上に当たる十人が、アラブ諸国出身の外国人で、うち一人はアフリカ大陸出身とみられる黒人だったことからも、国際的な構成だったことは明白となった。
 しかも、五日のインタファクス通信によると、武装集団の指導者は通称「マガス」と呼ばれるイングーシ人で、だとすれば、当初、チェチェン独立強硬派のメンバーが主導したとみられていた状況とは大きく異なる。
 「マガス」は今年六月に北オセチアに隣接するイングーシ共和国で治安機関襲撃事件を率いたテロリストとして知られ、ロシア南部にイスラム原理主義国家樹立を目指す(イスラム教スンニ派の一派)ワッハーブ派のジャマート(地下組織)に属す。約百人が死亡したこの事件でもアラブ人は襲撃に加わっていた。
 ワッハーブ派は、米中枢同時テロを引き起こした国際テロ組織アルカーイダの指導者、ウサマ・ビンラーディン氏の出身地のサウジアラビアが起源とされるイスラム教スンニ派の復古的改革運動。神の唯一性を強調、イスラムの純化を目指す原理主義的性格が強い。ロシア南部には一九九〇年代から旧ソ連崩壊とともに浸透し根付いてきた。
 ロシアの日刊紙、ガゼータによると、原理主義武装勢力の狙いは「植民地主義者ロシアの圧政からの解放」と、「チェチェン、ダゲスタン、イングーシに統一されたイスラム国家を建設、それをタタルスタンなど周辺のイスラム共和国にも広げること」にあり、そうした目的のため、アラブ諸国の同志が数億ドル規模を支援しているという。
 米国も昨年、イラクでのテロの黒幕とされるヨルダン人、アブムサブ・ザルカウィ氏がチェチェンにあるイスラム原理主義組織とつながりがあるとの情報を公表した。
 プーチン大統領は四日のテレビ演説で、チェチェンには一切、言及せず「勝つか負けるかのどちらかしかない。負けた者がどうなるかは歴史が示している」と述べ、国際テロと対決する決意を表明。反テロ戦争と国家統一のため近々、治安機関の改革などの対応策を打ち出すことを明らかにした。
 大統領が考える「戦時体制」がどのようなものかはまだ明らかではない。だが、民族や宗教が入り乱れ「ロシアのアキレス腱(けん)」ともいえるカフカス地方では、子供を中心に大量の犠牲者が出た学校占拠事件を契機に、民族紛争が拡大する懸念が出始めている。大統領が紛争の拡大を食い止めるため、あらゆる措置を講じようとしていることは間違いなさそうだ。
(北オセチア事件関連完)

<参考>
 台湾では、『環太平洋連合』が支持されている。
http://www.roc-taiwan.or.jp/news/weeknews287.htm
呂秀蓮副総統: 「太平洋世紀の柔軟な文明」講演   2003年9月19日
 呂秀蓮副総統は「第一回民主太平洋大会」の開幕式典で、「太平洋世紀の柔軟な文明」と題し講演をおこなった。以下は、その全文である。
 人類の戦争の歴史を振り返ると、古代から二十世紀初頭まで、戦争の多くは陸上を舞台に展開されました。その後、陸地の資源が減り、世界の人口が増加するにつれ、海洋資源の戦略的価値がますます高まり、国家の永続的生存と発展を求めるのに各国は積極的に海洋戦略を進め、人類の新天地として海洋の争奪戦が始まったのです。とくに冷戦終結後、国際体系が多元化の様相を呈し、陸地での競争で得られる利益が少なくなったため、各国はこぞって海洋へ目を向け始めました。こうした趨勢は同時に海洋の多元的局面を形成し、陸上における衝突に比肩する、海洋の利益をめぐる国家間の争奪をもたらしました。とくに豊富な資源が眠る太平洋海域において、各国間の争奪戦は少しも珍しいことではありません。 
 太平洋地域は広大で、そこに位置する国も多く、沿岸には三十カ国余り、世界人口の四〇%を占める約二十億人が生活しています。この地域の資源は非常に豊富で、漁獲量は世界の四五%を占め、世界の水産物の九〇%以上がここ太平洋海域で漁獲されたものです。太平洋の大陸棚は世界の石油、天然ガス資源の最も豊富な地域の一つです。太平洋の深海に眠るマンガン、ニッケル、コバルト、銅の埋蔵量は世界の陸上の数十倍から一千倍以上とも言われています。
 太平洋国家の工業は目覚ましく、経済も急速な発展を遂げ、ゴムや穀物、自動車、船舶、機械などの生産量は、世界で重要な地位を占めています。米国、日本の両国は太平洋を挟んで、今日の世界で最も発展した工業国となっています。
 西太平洋、東アジア地域に位置するロシアは、鉄鋼、石油、石炭、ロケット、宇宙開発技術、原子力、超音速飛行機の分野で世界のトップクラスにあります。アジア太平洋地域において、台湾、韓国、シンガポール、香港のいわゆる「フォードラゴンズ」の経済力、さらに市場改革以降の中国の国力の増強は、世界でも注目されています。
 しかし同時に、急速な発展により引き起こされたさまざまな問題を各国は抱えており、この地域の正常な発展を脅かしているのも事実です。なかでも、人口の増加と工業汚染は太平洋の漁業資源の枯渇を招き、沿岸に生息する生物の種類は日増しに減少しています。気候温暖化も一部の海洋国家と沿岸の都市の生存に脅威となっており、世界的な森林の大量伐採と破壊は、水資源と生態系に大きな損失とマイナス影響を与えています。これらの問題を解決するには太平洋地域の各国が協力し、資源と情報を統合し、海洋文化の顕彰と民主主義の定着を進め、住民の生存と発展を守らなければなりません。
 地域統合は、いまや人類分明の発展の趨勢であり、このことは多くの成功事例が貴重な啓示を与えています。不思議なのは、欧米やアフリカで地域統合がなされて、なぜアジアでできないかということです。それは、アジア三十九カ国のうち、十五の国でまだ民主主義が徹底されず、世界の五つの共産国のうちの四カ国、すなわち中国、北朝鮮、ベトナム、ラオスがアジアに位置しているからです。
 今年五月、インドの著明学者がインドと米国の主導により民主国家と地域からなるアジア版NATO(北大西洋条約機構)の設立によってテロリズムとその組織に対抗しようと提唱しました。このアジア版NATOは一切の専制国家、つまり中国とパキスタンを除いていることからも、それが民主主義と平和の価値を基礎にしていることがわかります。
 欧州連合(EU)の統合には、次の四つの特徴を見ることができます。まず、戦争を回避したいとの願望から発していること、強制的な統合はしないこと、経済と人的交流における協力のスタートとなること、さらに各国のメンバーが平等であるとの原則が基礎にあることです。
 これに対し、アジア各国の民主化はまだ一定の水準に達しておらず、共同のヒューマニズム的価値も打ち出せないまま、アジア連合ははるか彼方にあるように思えます。しかしながら、もし私たちが海洋文化の柔軟な思考で太平洋を望み、環太平洋民主国家が結合し、民主と平和の協力体制を確立し、共同で太平洋地域を守り立て二十一世紀の人類の新しい文明を創造することは、実現可能であると同時に、この上ない美しい光景であるに違いありません。
 台湾から見て、私たち二十一世紀は海洋文明の新紀元となると考えています。そして、海洋立国こそ台湾の国家発展の新たな未来であり、高度な戦略的観点から海洋を見据え、海洋を重視していく考えです。二十一世紀、台湾の海洋戦略の発展目標は、台湾を中心に円を描くように海洋に向けて発展することです。具体的には、民主と平和、繁栄を核とした柔軟な海洋戦略を持ちながら、国連の「海洋法条約」をすべての太平洋民主国が相互に遵守し、海洋の利益の保護に努め、太平洋の永続的発展を維持するというものです。柔軟な海洋戦略を基礎に、私たちは二十一世紀、太平洋のこの生命の磁場において、太平洋の新たな文明の旗手となり、柔軟な力を持った国づくりを太平洋地域の普遍的価値に据え、共同で太平洋を守り、海洋の永続的発展を求めていくことで、国家間の争奪戦や海上が戦火とする事態を避けたいと考えています。この理想を実現するため、私たちは短中長期の三段階の目標を掲げ、実行に努めます。
(一) 短期目標:民主大平洋大会(年度大会)
(二) 中期目標:民主太平洋連合(非常政府組織(NGO))
(三) 長期目標:太平洋民主国家連合(政府組織)
 柔軟な力は二十一世紀の人類文明の新しい思想であり、それは民主、平和、繁栄の三つの指標を通して実現され、推進されるものです。民主とは現代社会の普遍的価値であり、国の民主化のバロメーターでもあります。また、民主の原則、法治の原則、政党政治の実現、人権の保証、軍隊の国家化(党の軍隊から国の軍隊へ)、指導者の意欲が、民主の具体化を表す指標となります。そしてとくに、国民が「一人一票」を通じて国の指導者と前途を決定できるかどうかは、民主化の最低限の指標と言えるでしょう。本大会でどの国に出席を要請するかは、実はこれらの指標を基準に決定しました。各々の社会の民主化の浸透は、今後民主大平洋連合の加盟国が切磋琢磨するなかで実現されることを期待しています。
 平和は人類普遍の価値観でありながら、その実現は非常に困難です。かつて平和は政治思想と宗教の信仰のなかに存在し、国際社会の規範ではありませんでした。一九七〇年代、第三世代の人権が登場し、平和は一種の権利であるとの思想が生まれました。一九七七年、国連人権委員会が打ち出した「平和の権利」の概念は、その後、思想的弁論を経て発展しました。一九八四年、国連は「平和権利宣言」を採択し、世界の人びとが等しく平和を享受できる神聖な権利であることを確認すると同時に、各国民が享受する平和の権利と、この権利の実現を促進することは、国の基本的義務であると宣言し、ここから平和が人類の生存にとって基本的権利となりました。しかし、今日世界上にはまだ五つの共産国と数十もの非理性的反民主国家があり、かれらは平和に対する大きな脅威となっています。九・一一テロ事件以降、反テロリズムは米国の国家戦略の核となり、反テロ活動は国家を中心としたものから地域単位へ広がり、さらに世界を中心とした反テロ活動へ変化しています。それは、世界の安全にとって新旧の戦略が大きく変わる過渡期をもたらしました。
 過去半世紀、台湾の国民は経済、民主、平和の三つの奇跡を成し遂げました。これらを生んだ最も重要な要素は「人」であり、その原動力と言えるのが「国の柔軟な力」です。柔軟な力は、すべてを超えて道徳や思想、価値体系をも取り込み、社会、経済、政治の発展の原動力となりました。国の柔軟な力こそ、台湾と世界を連結する接着剤の役割を果たすのです。ここでいう柔軟な力とは、人権、民主、平和、愛する心、ハイテクなどで、これらは台湾の国民が五十年かけて一歩一歩積み上げてきた努力の成果にほかなりません。これら五つの力は、経済の略奪や軍事威嚇など従来の構造とは異なるものです。それは、崩れることがなく、自分も他人もプラスとなり、共に協力し、分かち合うものであって、片方を死に追いやり自らが生きるのでも、弱肉強食でもありません。こうした柔軟な力こそが二十一世紀人類の文明の特質となり得、その価値を大きく広げることができるのです。
 最後に、台湾の奇跡は、それによって国民が民主と繁栄を享受できただけでなく、それは必ず世界にも貢献できると信じています。アジアにおいて台湾の防衛は共産主義の蔓延を阻止しただけでなく、米大陸においては米国の裏庭となり、脅威を取り除きました。もし台湾がこの五十年間、中国の共産主義に対抗してこなかったら、アジアはみな共産化されていたに違いありません。また、米国の裏庭である中南米とカリブ海十四カ国が、台湾を友好国として受け入れ、中国の共産主義を拒絶したおかげで、米国は背後に憂慮を感じることなく、世界の超大国となり得たのです。つまり、米国が台湾の防衛に協力すると同時に、台湾も自由世界を防衛してきたのです。この五十年間、台湾は幾多の困難と試練に直面しましたが、私たちは歯を食いしばり黙々とその柔軟な力を貯え、特異な生存と発展の道を切り開いてきました。人類の文明はすでに弱肉強食の法則を拒絶しており、もはや強靱な国の力によっては人類の福祉をもたらすことはできません。ただ「平和と愛」、「協力と分かち合い」の柔軟な思考こそが、二十一世紀の普遍的価値になり得るのです。民主主義を深く浸透させることによって平和がもたらされる。民主と平和こそが、繁栄と進歩につながるのです。(呂秀蓮講演完)

 次号では、このような観点から、アメリカあるいはロシアによる核使用の可能性を検討してみる。 以上
(江田島孔明、Vol.18完)


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