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◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL19
 江田島孔明

△ アメリカが核を使う理由
 イラク戦争について考察をしていくと、現在の米軍へのテロ攻撃は激化していくことはあっても、終息に向かう気配はないことがわかる。なぜか?これはイラク周辺のシリアやイランが、間接直接に支援しているからだ。

<参考>
△ 戦闘、爆発で100人以上死亡 イラク、子供や記者も
 【バグダッド12日共同】バグダッド中心部や近郊で12日、駐留米軍と武装グループの戦闘や爆発が相次いだ。AP通信によると、イラク人ら計59人が死亡、約200人が負傷。子供や取材中の記者も犠牲となった。米軍はバグダッド西方のラマディでも武装勢力と戦闘、イラク人10人が死亡、40人が負傷した。
 特にシリアによるサポートについて、アメリカは相当の証拠をつかんでいると思われる。米軍の犠牲者は今後増加することは間違いない。しかし米軍の増派は世論もあって難しく、かといって日本を始め他の同盟国が大幅な派兵に踏み切ることも見込みが薄い。むしろ、現在派兵している国の撤退が現実味をますであろう。
 よって、米軍はイラクで孤立したまま損耗を続け、窮地にたたされる可能性が高い。これは、ベトナム戦争や独ソ戦やナポレオンのソ連遠征と同じパターンだ。地域住民を敵に回し、地の利を生かしたランドパワーとの消耗戦、ゲリラ戦になったら勝ち目は無い。
 ここからどのような展開が予測できるであろうか。
 まず、テロリストの鎮圧を本気で行うなら、シリア、イランを押さえる必要がある。しかし、イラクで手一杯の状況で戦線を拡大して軍事侵攻することも、非常に難しいが、核を用いれば全く考えられないではない。
 なお、イラク戦争の真の目的は、イスラエル安全保障と石油直接支配であるからこの観点から、両国への攻撃は必至である。
 そこで、手はじめにシリアに対して「テロリストの支援を止めよ。聞き入れないならば核攻撃する」と通告する。この場合の核は小規模のもので十分だ。そして、現在それを開発中である。シリアが通告を無視した場合、実際に戦略拠点への核攻撃するのである。
 そして全世界に「テロ支持者、支援国には先制核攻撃する」と宣言する。おそらく、ロシアは支持するし、同じことをチェチェン、グルジアに対して行うだろう。

△ 草原の掟=大量殺戮の歴史
 歴史的に見て、ハートランドに棲息するランドパワーの歴史とは大量殺戮の歴史でもある。
 かって、中近東を支配したモンゴル帝国が、ボハラ、サマルカンド、バグダットにおいて、降伏勧告を無視したので、女子供にいたるまで徹底的に殺戮したいわゆる遊牧民の「草原の掟」に通ずるものである。
 モンゴルは、その世界帝国を維持する上で、徹底的な自治、民族間の公平を原則とした。しかし、それは、帝国への反乱者は過剰報復で全滅させることにより始めて可能になったのである。
 これは、同じようにハートランド支配を目論見、ソ連に攻め込んだナチスドイツの占領政策にも通じるものがある。彼らは、反独の地域住民やユダヤ人をまさしく、根絶やしにしようとしたのだ。SSアインザッツグルッペン(粛清実行部隊)のやったことといえば、
・ユダヤ人、共産党人民委員、ロマなどを大量射殺。
・上記以外のロシア人も劣等民族として殺戮。民間人の犠牲者は700万人に達した。
・占領地での徹底した略奪、破壊。ソ連全体で2500万人が家を失った。
 ヒトラーは、スラブ民族を奴隷化して植民化しようと考えていた。いわゆる「東方生存圏」獲得構想。自ら演説のなかで「これは、絶滅戦争だ」と述べている。スローガンではなく、実際に実行しようとしたところが恐ろしい。第2次世界大戦におけるソ連の死者は2000万人以上である。
 さらに歴史を遡って、古代からの中東史や中国史を見ると、戦争に負けた被支配民族は根絶やしか、よくても奴隷化が普通であった。これが、この地域のランドパワーの真の姿であり、本質なのだ。このような歴史を経て、彼らは狡猾、残忍、獰猛性および専制、独裁体質を身に付けたのだ。プーチン大統領が「勝つか負けるかだ。負けたものがどうなるかは歴史が示している」と述べたのはそういう意味だ。我々日本人は島国に住んでおり、ランドパワーの獰猛性を経験していない。唯一、戦後の満州残留者はこれを経験したのだが。学校テロ事件を他山の石として、このようなランドパワーの本質を見極める必要がある。今後のロシアの報復、それに対する報復テロは一層、凄惨な様相を呈し、核使用までエスカレートするだろう。地域の安定には根絶やししかないのだから。
 ちなみに、日本人は英語の『Peaceを平和』と訳しているが誤訳だ。
 語源の『Paxの意味は、弱者を強者が征服し併合することによって達成された安定』というのが正しい。二者の対立する地域に安定はないということだ。みんな仲良くといった甘い考えは、ランドパワーに通用しない。Paxという言葉の意味を考えるべきだ。
 付言するならば、戦後の冷戦期は、シーパワーアメリカとランドパワーソ連の勢力が均衡し、ユーラシアが例外的に比較的安定していた時代であり、別の見方すると、「冷戦は米ソ共同による地球管理体制」ともいえる。ソ連衰退によりこのバランスが崩れたため、ランドパワー相互の歴史的対立が再燃し、本性が露になっただけだ。

△ ハートランドの掟
 カフカス地方や中東は、マッキンダーの言うハートランドにあたる。東欧を制するものはハートランドを制し、ハートランドを制するものは世界島を制し、世界島を制するものは世界を制す」・・・ハルフォード・マッキンダー(英、1861−1947)(注:ハートランド=ユーラシア大陸中央部、世界島=ユーラシア大陸)
 洋の東西を問わず、ランドパワーはハートランド(大陸の中央部)を目指す本能をもつ。
 これは、西洋ではアレクサンダーやナポレオン、ヒトラーが例である。第一次世界大戦における、ドイツの3B政策もこれに含まれる。東洋では「中原」といわれた華北平原の争奪を、漢民族と北方騎馬民族が歴史的に行ってきたことが例である。三国志を読めば、いかにこの中原の支配が重要かわかる。
 なぜ、彼らはハートランド支配に拘るのか?それは、海軍戦略を考慮に入れずランドパワーの理論のみで考えるならば、ハートランドの支配が死活的に重要だからだ。
 ハートランドは陸上交通の要衝であり、この地域を敵対勢力に握られると周辺のランドパワーはその圧力にさらされ、生存が困難になる。ハートランドと地続きの地域に棲んでみないと、これは、理解できない。
 しかし、ここに落とし穴がある。それは、一旦ハートランドを支配してしまうと、今度は周辺地域が全て敵対勢力になり多正面作戦になるということだ。このため、ハートランドの長期間の支配に成功した例はない。ハートランドのSustainability(維持可能性)が限りなく低いことは、歴史上数え切れない例で実証されている。
 歴史的に見て、中国や中近東で政権、王朝の交代が激しい最大の理由はこれである。このような観点から、ロシアのカフカス支配、アメリカの中東戦争はともにハートランド支配権をかけていずれ衝突することが確実であり、ともに失敗すると考える。ユーラシア大陸の歴史は、このハートランドを巡る闘争の歴史でもある。
 要約しよう。「ハートランドを敵対勢力に握られたら生存できないランドパワーは、ハートランドの支配を目指す。しかし、一旦支配してしまうと、敵に囲まれ、崩壊する。」ということだ。
 すなわち、ハートランドを支配できても、できなくても、ランドパワーに生存は困難であり、「安全保障コストが高くつく、経済発展ができない」理由もそこにある。
 例外は戦後の枠組みである冷戦だ。戦後の枠組みの冷戦期においては、独仏や韓国といった本来のランドパワーが、このハートランドに手を出さずランドパワーから切り離され、シーパワーとして発展が可能であったのだ。
 これは、むしろ、歴史的に見れば僥倖にすぎない。韓国軍の初代将軍(当時弱冠30歳)の白善ヨプ氏はこの価値観を持っていた。すなわち、韓国はDMZ(軍事境界線)を海峡に見立て、シーパワーとして生きるために、今まで多大な犠牲を払ってきたのだと。そして日本、アメリカの海洋勢力 と結んだことで、「島国」として発展してきた。
 独仏も同じように、鉄のカーテンを海峡にみたて、シーパワーとして発展してきたのだ。
 彼らは、冷戦崩壊後、その僥倖を忘れ、ランドパワーに回帰し、ハートランドを目指している。ハートランドの争奪戦にロシアは必ず加わってくる。何故なら、ハートランドはランドパワーにとって、「聖地」だからだ。イスラム、米露、イスラエルを主役とし、欧州、中国を脇役とするこのハートランド争奪戦は現在、泥沼の死闘となっている。これこそが、チェチェンやイラクの真の意味だ。
 一時期、国際金融資本の代理人で、実質的なアメリカの大統領でもあるグリーンスパンが、”Geopolitical Risks”が発生すると言っていた。日本のマスコミはこれを「地政学リスク」と訳したが、それ以上の解説は行わなかった。 真の意味は「ハートランドをランドパワーとシーパワーが奪い合う死闘が起きる」という意味だ。彼の予言どおりになっている。背後でイスラエルもしくは国際金融資本が、糸を引いているのは明白だ。
 そして、この戦いに勝者はなく、凄惨な共倒れに終わると考える。ロシアの参戦は不気味にも聖書に予言されている。

<参考>
国際派日本人情報ファイル
http://melma.com/mag/56/m00000256/a00000814.html
 聖書に警告されたユーラシアの禁忌
”ハートランドのものはハートランドに、リムランドのものはリムランドに”(山本英祐)
「 "QUAE CAESARIS SUNT,CAESARI ET, QUAE DEI SUNT DEO"
”カエサルのものはカエサルに、神のものは神に”(ルカ書20章)
 ユーラシア大陸の外延部(西欧・地中海世界)リムランドや、島嶼部海洋国(米英アングロサクソン,日本)が、ハートランド(ロシア・中央アジア・中国)に深入りすべきではないことは古代から聖書にも表されている様です。
 地政学者ハルフォード・マッキンダー卿が定義した、欧州・地中海世界などユーラシア外延部や島嶼部に対立する、ユーラシア大陸中央部の聖域『ハートランド』地域の脅威は、決して 近代に認識されたものではないようです。
古代より、即ち旧約聖書の時代から、当時の文明圏であった地中海世界地域(小アジア、中東、欧州)で知られていたようです。
キリスト教・ユダヤ教、イスラム教の3大一神教の経典である聖書には、旧約と新約両方に『ユーラシアのハートランド地域に相当する』最終的に世界を脅かし破滅させる『悪の軍勢』として、『ゴグ』と『マゴグ』というなぞめいた存在が執拗に登場します。
ゴグやマゴグは、聖書考古学上では黒海、カスピ海のある、ロシア中央アジア地域を指すものと考えられています。ちょうど マッキンダーが定義したユーラシア大陸内陸部ハートランドにまさに相当する地域です。
 ”人の子よ、マゴグの地のゴグ、すなわちメシュクとトバルの総首長に対して顔を向け、彼に預言してこう言いなさい。主なる神はこういわれる。「メシュクとトバルの総首長ゴグよ、私はおまえに立ち向かう。」(中略)ゴメルとその全ての軍隊、北の果てのベト・トガルマとその全ての軍隊。”(エゼキエル書38章)
 ”サタンはその牢から解放され、地上の四方にいる諸国の民、ゴグとマゴグを惑うわそうとして出て行き、彼等を集めて戦わせようとする。”(黙示録20章)
 ”マゴグは黒海とカスピ海の間に位する地。なおラビ伝説においては、この二つの地名は常に神の敵の代表者として出てくる。”(フランシスコ会聖書研究所注釈より)」
 聖書にゴグ・マゴグとして予言されているロシアは、バルト・中央アジア・コーカサスをアメリカに奪われても忍耐してきた。
 しかし、グルジア(背後に米国)とロシアの対立は、日ごとに激しくなっている。プーチンはいつまで耐えることができるのか。近いうちに、ロシアの先制攻撃により、ハートランドを巡る米露の死闘が本格化するだろう。

<参考>
マスハドフ、バサエフ両氏が命令=大カフカス戦争狙う−武装集団
 【モスクワ7日時事】ロシア北オセチア共和国の学校占拠に参画し、拘束されたカフカス系とみられる男は、7日、ロシア・テレビに対し、学校占拠の命令は、チェチェン共和国独立派の指導者マスハドフ元共和国大統領とバサエフ野戦司令官から受けたことを明らかにし、「カフカス地方全体に戦争を拡大するのが目的だった」と語った。事件を捜査しているラポトニコフ検事も、バサエフ司令官に属する組織が実行したと述べた。 
 【モスクワ2日共同】ロシア・チェチェン共和国の独立を唱えるチェチェン武装勢力の越境をめぐり、ロシアと隣国のグルジアとの関係が悪化の一途をたどっている。              
 ロシアの掃討作戦を逃れグルジアのパンキーシ渓谷に逃げ込んだ武装勢力が、国境を越えチェチェンに戻り始めたことに、ロシアは「グルジアが国境で何の措置も取っていない」と非難。一方で、グルジアは「対策は取っている。逆にロシア軍機は、グルジアの空域に入り、渓谷の武装組織を攻撃しており、明らかな主権侵害」と反論している。                   
 双方は非難をエスカレートさせており「イスラエル軍がパレスチナを攻撃するように、ロシアもグルジア領に(地上から)入って攻撃すべきだ」(ミロノフ・ロシア上院議長)と、戦争にも結びつきかねない強硬な意見も出始めた。ロシアのプーチン政権はこれまで、チェチェン武装勢力に対し強硬な姿勢をとり、主要拠点をほぼ制圧。武装勢力はパンキーシ渓谷などに逃げ込み、反攻の機会をうかがっていたが、最近になり数百人単位でチェチェンに侵入し始めた。しかし、陸軍約八千人余りと十分な軍事力を持たないグルジアは、渓谷やロシアとの国境での取り締まりを行えず、ロシアをいら立たせる結果となっている。                  
 ブルネイでのパウエル米国務長官との会談で、イワノフ・ロシア外相は問題を説明し、米国に理解を求めた。グルジアに反テロ作戦部隊を派遣している米側はロシアの憂慮に理解を示す一方、「グルジアの主権を侵すべきではない」と、ロシアの軍事行動に自制を求めている。    

2004年09月10日(金)
△ 露の国際テロ拠点先制攻撃 グルジアに照準
 【モスクワ=内藤泰朗】ロシアのプーチン政権は八日、国際テロの国外拠点への先制攻撃も辞さない強い姿勢を示したが、南部のチェチェン共和国に隣接するグルジアに矛先が向けられている可能性が出てきた。グルジア経由で資金などを受け取るチェチェン独立派の徹底掃討が視野にあるためだ。ただ、越境攻撃となれば、悪化する対グルジア関係がさらに険悪化する懸念もある。
 ロシアが北オセチア共和国の学校占拠事件を機に国際テロとの対決姿勢を示したことで、国際テロと戦う米国と今後、アフガニスタンやイラク方面で米露の協力が進むとの見方も出ている。
 だが、専門家の多くは、ロシアが当面敵視するのはチェチェン独立派であり、同派に協力、支援する勢力や国だとみる。
 ロシア参謀本部の元報道担当のビクトル・バラネツ退役大佐は、九日、産経新聞に「今ならば、ロシア軍がチェチェン独立派の支援センターと化しているグルジアのパンキシ渓谷を爆撃しても、世界は理解してくれるだろう」と述べた。
 ロシアは一昨年、同渓谷を「武装勢力の出撃拠点だ」として越境爆撃し、グルジアをはじめ国際社会の反発を買った。 同大佐によると、国際テロ組織アルカーイダの資金が、グルジア領内のチェチェン共和国との国境地帯にあるパンキシ渓谷を通じて独立派に渡り、イスラム過激派もこの渓谷経由で入ってくる。
 ロシアが超高額懸賞金を付け指名手配した独立派指導者のマスハドフ氏は先月二十日、グルジアのテレビとのインタビューに出演し、ロシアに強硬姿勢を見せるサアカシビリ大統領への支援を表明。「隣国の運命はわれわれと無関係ではない。(ロシアに対抗する)グルジアの大統領は厳しい時を経験している。ロシアと戦ってきた私がよくわかる」と述べた。
 カスピ海の石油を地中海に向け輸出するために、米国主導でパイプライン建設が進むグルジアは、ロシアのエネルギー戦略の要衝でもある。

△ ハートランドを巡る米露の死闘
 この問題の背景として、ハートランドの支配権を賭けた、米露の死闘がある。
<参考>
ロシア政治経済ジャーナル No.283 2004/9/8号
http://www.mag2.com/m/0000012950.htm
 「9月4日18時。私達は、ビールを飲みながら、プーチンさんのテレビ演説を見ていました。内容はもちろん、テロのことと、これからどうするかということ。演説の中で、「???????」と思われる箇所があった。後でロシア人の友人に聞いても「???????」だったとのこと。
 その部分とは?プーチンさん「(私たちは)弱さを見せた。弱い者は打たれる。ある人達は私たちから肥沃な部分を奪おうとしている。他のある人達は、彼らを助けている。」
 この部分だけ見ると、肥沃な部分を奪おうとしているのがチェチェンの独立派で、それを助けているのが国際テロ集団(例えばアルカイダ)なのかな〜と思えますね。
 ところが、その続きを聞くと、「ロシアは、最大の核大国の一つであり、彼らにとって未だ脅威であると考えているので助けている。だから、この脅威を取り除かなければならないと。」
 言うまでもなく、チェチェン独立派が目指すのはロシアからの独立であり、国際テロ組織が独立派を助けるのは、ロシアが核保有国だからではありません。さらに演説は続きます。
 「そしてテロは、当然これらの目的を達成するための道具にすぎない」ここまでを要約すると、
1、ロシアは核保有国で脅威だと考えている人(あるいは国)がある。
2、で、その人(あるいは国)は、脅威を取り除く、つまりロシアを弱体化させなければならないと考えている。
3、テロは、ロシアを弱体化するための道具である。
 となります。
 誰が「ロシアは核をもっているから脅威だ!」と考えているのでしょうか?で、誰がテロを道具にしてロシアを弱体化させようとしているのでしょうか?
 演説を聞いたたくさんのロシア人に聞いてみましたが、「プーチンはアルカイダやチェチェン独立派のことを言っている」と答えた人は一人もいませんでした。
 ここで断定的なことを書くのはやめておきましょう。
 しかし、「チェチェン問題」というのは「カフカス問題」の一部にしかすぎないと認識した方がよいのです。
 ではカフカス問題とは何か?

△ カフカスの米ロ対立
 カフカス問題の本質は、ロシアと米国の「石油をめぐる争い」と言ってもよいでしょう。それは、イラク問題が、米国とロ・仏・中の「石油をめぐる争い」だったのと同じ。(イラクに関しては、石油オンリーじゃないですが。)
 説明します。
 カスピ海に面する、カフカスの旧ソ連国アゼルバイジャン。原油の埋蔵量は推定2000億バレルと言われています。(推定だから、ホントのことは誰も知らない)同国は現在、原油を首都バクーからロシアのノボロシースクまでパイプラインで流し、世界市場に供給している。
 一方、カスピ海の膨大な原油を確保したい米国は、アゼルバイジャンから隣国グルジアを通過し、トルコに抜けるパイプライン建設プロジェクトを推進中。これが完成すると、年間5000万トンが、ロシアを経由せずに、世界市場に送り出されることになる。
 パイプライン問題は、カフカスで起こっている、全ての紛争の元凶なのです。建設を阻止したいロシアは、グルジアからの独立を目指すアプハジア・南オセチア・アジャリア共和国を支援しています。
 一方でグルジアは、チェチェンの武装勢力を保護している。原油のあるアゼルバイジャンはどうかと言うと、故ゲイダル・アリーエフ前大統領は、プーチンにとってKGBの大先輩で、両国関係は良好でした。

△ カフカスの米ロ対立2
 カフカスの米ロ対立は現在、米国有利で進んでいます。昨年から現在まで、ロシアにとって不利な出来事が次々と起こっているのです。まず、2003年9月。パイプライン建設が開始。完工は今年度末の予定。
 次に、プーチンさんと仲良しだったゲイダル・アリーエフ大統領が死亡。昨年10月の大統領選で、息子のイリハム・アリーエフが当選します。42歳のイリハムは、親米派。さらに、グルジアでも政権が交代しました。
 グルジアの大統領は、日本でも有名な元ソ連外相のシュワルナゼ。同大統領は昨年11月、野党からの退陣要求に屈し辞任。米国が野党勢力を支援していたため、シュワルナゼは「米国に裏切られた」と公言しているのです。
 今年1月の選挙で勝利した、36歳の新大統領サアカシビリは、コロンビア大学とジョージ・ワシントン大学を卒業したバリバリの親米派。米国の圧倒的な力を背景に、サアカシビリは5月6日、親ロシア・アジャリア共和国のアバシゼ最高会議議長を退陣に追い込みます。同大統領は現在、同じく親ロの南オセチア共和国支配を目指して行動を起こしています。
 その後はアブハジア。5月9日、チェチェン共和国のカディロフ大統領が、爆弾テロにより死亡しました。カディロフは、元イスラム教聖職者で、独立派のリーダーだったのですが、99年に親ロ派に転向。2000年夏、プーチン大統領に任命され行政府長官に、昨年秋、選挙で圧勝し大統領に就任したのです。
 ここまでの構図を整理してみましょう。
 1、米国とロシアは、カスピ海の原油をめぐって争いを続けている
 2、米国は、原油のあるアゼルバイジャン・パイプラインの通るグルジアに親米政権を打ち立てることに成功している
 3、米国に支持されているグルジアは、チェチェンの武装勢力を保護している
 4、ロシアは、グルジア国内の独立勢力を支援している
 もちろん私は、「米国が今回のテロにからんでいる」と言っているのではありません。証拠もないのに、そんな過激で無責任なことを書くのは間違っているでしょう。
 ただ、チェチェン問題というのは、「ロシア対チェチェン独立派の対立」と言う一言では片付けられない。もっとグローバルな問題なのだということを知っておいたほうが良いということなのです。

△ テロで得した人
 最後に今回のテロで最も得をした人は誰か書いておきましょう。何度も強調しておきますが、私は、米国と今回のテロ事件が関係あるといっているのではありません。ただ「事実として誰が得をしたのか?」という話です。一見何の関係もないように思えるのですが。これは、ブッシュが一番得をしたのです。なぜか?ブッシュは、「国際テロ」との戦いを力強く宣言している。もちろん、「大量破壊兵器がなく、フセインとアルカイダが関係ないのにイラクを攻めた」ことに論理性が与えられるわけではありません。ところが、国際テロの動きが活発になると米国民は、「あ〜、ブッシュの言ってることは正しいとなるのです。「証拠はあるの?」あります。ここ数ヶ月間、ブッシュとケリーの支持率はほとんど同じだった。ところが、ニュースウィークの最新調査によると、ブッシュの支持率は52%、ケリーは41%で11%も差をつけている。ブッシュの支持率は、8月から13ポイントも上がっているのです。

 【テロが増えるとブッシュの支持率が上がる】
どうやら、ブッシュの再選は確実になってきた感じですね。そして、戦争は続いていく。「なんでそうなるの?」これは、バックナンバーで何度も触れていますので、参考になさってください。「今、ブッシュが違法にイラクを攻撃したこと、利益を独占したことを理由に、世界が平和に向かって連携しつつあります。ところが、これに対する反作用として、戦争を求める動きが強まるのです。具体的には、世界中でテロがますます増加していく。
 そして、国際世論を「ほらね!国際テロは怖いでしょ?ブッシュは正しかったでしょ?」と誘導する動きが強まってくる。今回のメルマガの題は、「兆し」ですが、「平和な世界に大前進!」とか、「世界平和一歩手前!」ではないのは、上のような理由によるのです。まだまだ長い戦いが続くのですね。」

△ 核使用こそが被害を極小化する?
 そして核使用こそが、彼我の被害を極小化し、終戦へのトリガーになることは太平洋戦争で証明済み。太平洋戦争で核が使われず、本土決戦がおこなわれていたら数百万の犠牲が出ていたであろう。
 ブッシュ政権は2002年9月20日、大量破壊兵器を持つ敵への先制攻撃を正当化し、他国の追随を許さない軍事力の圧倒的な優位を堅持することを打ち出した政策文書「米国の国家安全保障戦略」を発表したことはこの文脈で考えるべきである。
 そして、この米国による核使用こそが、今後長期に続く対テロ戦へ、日本や諸外国が関与しなくてすむ唯一のシナリオだ。そしてさらに重要な視点として、核を第二次大戦後実際に使った前例ができると、中国、北朝鮮への恫喝になることも付け加えておく。これで六カ国協議は日米に有利に進むことは間違いない。
 ソ連がアフガンから撤退したような形で米兵がイラクから撤退すれば、まさに世界はテロとその背後の勢力に支配される。それを避けるには米国による核使用しかない。

△ 核の敷居
 まさに、草原の掟である。そして米国もしくはイスラエルはその核使用を正当化するため、自国での大規模テロを自作自演するのではなかろうか。シリア、イランの関与の証拠を残して。
 核は政治リスクやタガがあり、容易には使用できない。しかし、小型核の開発や国際情勢の推移により、その敷居は間違いなく冷戦期のそれより、低くなっている。最悪の事態として、米国もしくはイスラエルによる核使用が、そのような、核のタガを外し、地域紛争やテロで核が安易に使用されるような世界だ。そして、それは間違いなく近づいている。

△ 迫られる決断
 要約すると、欧米露のキリスト国そしてイスラエルは、今後の対イスラム政策において、モンゴルのやり方をとるか、十字軍やアフガン侵攻ソ連軍の失敗を再現するか、二者択一の決断を迫られている。この決断を先延ばしすればするほど、無辜の命が失われていくことになる。イスラエルは、明確にモンゴルのやり方に欧米露を引き釣り込もうとしている。

△ 環太平洋連合
 以上のように、前号までで見たイスラエルの立場、さらに聖書の予言からも、ハートランド地域の歴史的、戦略的観点からも中東核戦争は避けられないことを私は確信している。バレル当たり過去最高の50ドルに達そうという原油価格高騰は、この核戦争を市場が織り込んでいるためとみるべきだ。
 よって日本は、中東石油への依存率を徹底的に下げ、イランの油田も速やかに放棄し、「水素核融合はじめ石油代替エネルギーと大陸棚開発」に国力を傾けるべきだ。そのためなら、一時的にはロシアの石油への依存もやむを得ないと考える。しかし、長期的には北半球の地球環境悪化、戦争リスクを考慮し、環太平洋連合(http://homepage3.nifty.com/47576-inaka/ise42.htm)を樹立し、豪州、NZといった地域に生存圏を確保すべきだ。
 そして、日本を含むシーパワー国家の戦略重心を「脱石油、脱中東」へ向けることは喫緊の課題だ。要するに、如何にして「イラク戦争を契機に本格的戦国時代を迎えたユーラシア大陸(むしろ、ユーラシアは有史以来戦国時代が続いており、冷戦期は例外的に安定していた時代ともいえる。ユーラシアは環境の面からも安保の面からも、ものすごい勢いで破滅に向かっているのだ。国境を接するランドパワーとは有史以来、敵同士なのだ。)と縁を切る」かを、今後の日本の戦略の根幹におく必要がある。
 そして、それは聖徳太子や北条時宗以来のわが国存立の基盤だったのだ。ランドパワーとの提携には、このような戦国時代に巻き込まれ、当事者になってしまう危険がある。日本人は戦前の歴史に学ぶべきだ。
 重要な点として、このような脱石油技術開発に対して、石油資本に牛耳られているアメリカは、「必ず圧力をかけてくる」ということだ。資源外交により、メジャーからの自立を図った田中角栄が、アメリカによって潰されたことを忘れてはいけない。よって、「技術開発は極秘」で行う必要がある。

<参考>
 下記はプーチン大統領の演説の抜粋であるが、国際テロと背後の勢力への総力戦(This is a total, cruel and full-scale war that again and again is taking the lives of our fellow citizens. But most important is to mobilise the entire nation in the face of this common danger. )を呼びかける宣戦布告だ。日本のメディアは何故か伝えない。まさに、ロシアは、第二次世界大戦(大祖国戦争)以来の戦時体制に入ったといえる。
Address by President Vladimir Putin
September 4, 2004
Moscow, Kremlin
Some would like to tear from us a “juicy piece of pie”. Others help them. They help, reasoning that Russia still remains one of the world’s major nuclear powers, and as such still represents a threat to them. And so they reason that this threat should be removed.
Terrorism, of course, is just an instrument? to achieve these aims.
As I have said many times already, we have found ourselves confronting crises, revolts and terrorist acts on more than one occasion. But what has happened now, this crime committed by terrorists, is unprecedented in its inhumanness and cruelty. This is not a challenge to the President, parliament or government. It is a challenge to all of Russia, to our entire people. Our country is under attack.
The terrorists think they are stronger than us. They think they can frighten us with their cruelty, paralyse our will and sow disintegration in our society. It would seem that we have a choice - either to resist them or to agree to their demands. To give in, to let them destroy and plunder Russia in the hope that they will finally leave us in peace.
As the President, the head of the Russian state, as someone who swore an oath to defend this country and its territorial integrity, and simply as a citizen of Russia, I am convinced that in reality we have no choice at all. Because to allow ourselves to be blackmailed and succumb to panic would be to immediately condemn millions of people to an endless series of bloody conflicts like those of Nagorny Karabakh, Trans-Dniester and other similar tragedies. We should not turn away from this obvious fact.?
What we are dealing with are not isolated acts intended to frighten us, not isolated terrorist attacks. What we are facing is direct intervention of international terror directed against Russia. This is a total, cruel and full-scale war that again and again is taking the lives of our fellow citizens.
World experience shows us that, unfortunately, such wars do not end quickly. In this situation we simply cannot and should not live in as carefree a manner as previously. We must create a much more effective security system and we must demand from our law enforcement agencies action that corresponds to the level and scale of the new threats that have emerged.?
But most important is to mobilise the entire nation in the face of this common danger. Events in other countries have shown that terrorists meet the most effective resistance in places where they not only encounter the state’s power but also find themselves facing an organised and united civil society.

<参考>
△ イランが軍事演習、米国の攻撃を念頭に
 【テヘラン12日共同】イラン革命防衛隊のゾルガドル副司令官は12日、国営テレビのインタビューで、軍事演習「アシュラ5」を同日からイラン西部のイラク国境沿いで行うと明らかにした。
 副司令官は「超大国による攻撃に対抗するため」として、米国を念頭に置いた演習と主張しており、イラク駐留米軍を刺激しそうだ。演習は、20日までの予定。民兵組織のバシジ(人民動員軍)も参加する。 (22:00) 以上
(江田島孔明、Vol.19完)


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