
◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL21
江田島孔明
△ 環境破壊への対処
前号までで述べた中東の戦争リスク、地球環境の徹底的破壊を考えると、ユーラシア大陸の未来は、絶望的であることがわかる。そこで、日本を含むシーパワー国はどうすべきかを検討したい。
シーパワーに開発のアドバンテージ、地の利(海の利?)がある、今後成長が見込める新たな海洋開発に関する分野を以下に記す。重要な点は、陸上の資源(石油、鉱物等)の獲得は、関係国の利害対立から容易に戦争、環境破壊に至った。これは20世紀が人類に教える教訓である。
更に言えば、農耕の開始から戦争は始まった。すなわち、陸のパラダイムは不断の対立と戦争のパラダイムでもあったのだ。一方、無限の可能性を秘めた海洋開発については、一国でも制海権を持できる国があれば、戦争の可能性は極小化できる。シーパワーはこのことに気がつくべきである。中国内陸部への投資や日本国内の新幹線、高速道路建設を止め、国家戦略的に海洋開発の比重を高め、国費を投入し、水圧と戦う技術向上、コスト削減を目指していくべきだ。
海に選挙民がいず、票にならないからやらないというのではいけない。真の構造改革とは、内政のパラダイムを陸から海にシフトさせていくことである。そして、環太平洋連合はこの海洋開発の枠組みとしても機能していく。日本を始めシーパワーの最先端技術と資本が、無限の可能性を秘めた海洋開発に向かうなら、必ずやシーパワーは困難が予想される21世紀を乗り越えることができる。我々のフロンティアは海なのだ。環太平洋連合による海洋開発を「海のトリトン計画(”Project TRITON OF THE SEA”)」と名づけたい。
△ 海洋開発
日本の特性として海岸線が長く、しかも太平洋に面している部分が非常に長い。この大陸棚は豊富な資源の宝庫であり、うまく開発すると資源輸出国となれる。
日本の200海里排他的経済水域(EEZ:Exclusive Economic Zone)が世界第六位の451マン平方キロ(第一位はアメリカの762万平方キロ)であることをご存知であろうか。
200海里排他的経済水域とは、第二次世界大戦後、大陸棚や漁業資源に対する各国の主張が高まり、国連海洋会議が開催されるようになり、1982年、国連海洋法条約を採択した。排他的経済水域は領海の基線から200海里の水域であり、沿岸国は次のような権利や義務を持つとされている。
@)海底とその下にある生物や非生物の天然資源の探査、開発などの権利
A)海水や海流または風からのエネルギー生産のような経済的利用の権利
B)人工島などの設置や利用、科学的調査、環境保全についての管轄権、
他方すべての国は漁業など資源利用権はないが、航行、上空飛行など交通通信権は保持する。
△ 政府・与党、海底資源確保、大陸棚調査費を大幅増額―6年で1100億円-2003/07/07-拡大へ国連認定狙う
政府・与党は4日、海底の鉱物資源などの権利獲得のために行う大陸棚調査を抜本的に強化する方針を固めた。今後6年で千数百億円規模の予算を確保する方針で、まず来年度予算概算要求に百億円超の調査費を盛り込む方向で調整する。現在のペースでは2009年の国連への認定申請の期限時に大陸棚の拡大承認を得るのが困難なため調査を加速する。
国連海洋法条約では大陸棚の地質・地形が一定条件を満たす場合、海岸線から200カイリまでの排他的経済水域の範囲外でも沿岸国は経済上の権利を主張できると規定。今年3月までの概要調査で新たに日本の大陸棚となる可能性のある海域は国土の1.7倍に相当する約65万平方kmに及ぶことがわかった。
しかし国連の認定を受けるためには、陸地から大陸棚への連続性などについて更に詳細な調査が必要なことも判明。「今のペースでは2009年の申請期限時に必要なデータの1割しか集まらない」(海上保安庁)ことも踏まえ、今年度予算で約2億円だった調査費を大幅に増額し、態勢を拡充することが必要と判断した。4日午後の与党3党の幹事長会談で調査拡充に向けた基本方針を確認。海上保安庁などを中心に新たな調査計画を策定する。
具体的には現在使っている海上保安庁の調査船に加え、文部科学省の海洋調査船などを投入。精密なボーリング調査や地形・地殻構造調査の民間委託も推進する。海底の地殻構造を測定する海底地震計の数も現在の30個から1000個程度に増やす方針だ。
大陸棚の認定可能性がある海域ではコバルトやマンガン、メタンハイドレートなど数10兆円相当とみられる鉱物資源があると推定されており、生息するカニやエビなどの深海生物は医薬品開発につながるバイオ資源としても期待されている。大陸棚の拡張で獲得した資源は国の帰属となり、公社・公団や採掘権を付与された民間会社などによる開発が想定されている。―2003.07.04 日本経済新聞
△ 海洋生物資源
近未来に想定される食糧危機に対応するため、緊急かつ重点的に取り組むべき項目である。この資源を開発、持続できればシーパワー諸国に食糧危機はなく(南氷洋のおきあみ等、手付かずの資源もまだある。)、内陸部の環境破壊が食糧不足を招くことは確実なランドパワーに対して優位に立てる。
<参考> 海洋牧場
http://www3.jf-net.ne.jp/seafood/island/02/bokujyo.htm
「海洋牧場とは、日本周辺の沿岸水域の整備と漁業の開発を一体化した総合的な構想です。 たとえば、突堤(とってい)や消波堤(しょうはてい)で潮の流れをコントロールして、よごれのない安全な湾(わん)や砂浜(すなはま)を作るとか、海藻(かいそう)をふやして藻場(もば)を作るなど、魚の産卵(さんらん)や稚魚(ちぎょ)が育ちやすい環境(かんきょう)をととのえようと考えています。
さらに、いろいろな形のうき魚礁(ぎょしょう)や、魚礁ブロックを設けたり、沖合(おきあい)には増殖(ぞうしょく)場や魚を集める音響誘導(おんきょうゆうどう)の装置、ブイロボットなどを設け、海洋調査船や人工衛星をつかって漁船に魚群の情報を提供するなど、先たん技術を活用する構想となっています。また、将来、イルカに魚の番をしてもらうという、夢のようなアイデアも考えられています。 」
△ 海底鉱物資源
http://www.tokimec.co.jp/report/vol02/toku04.htm
△ 「海底の埋蔵量 > 陸上の残量」の関係式
現代産業の主役たる、ハイテク産業を支えるレアメタル。ニッケル、マンガン、コバルトといったものがこれに当たる。日本は現在、多くの有用金属を特定少数国からの輸入に頼っており、レアメタルに関しては全量に近い。ところがこれら輸出国は国情に不安定さもかかえ、情勢の緊迫は日本の産業を直撃することが懸念されてきた。
一方、いくつかの有用金属の陸上残存年数は、多く見積もっても150年以下と言われる。来世紀中には、枯渇ということが現実に取りざたされているだろう。この状況を解決する手段として注力されているのが、海底資源の開発だ。現在、マンガン団塊、コバルト・リッチ・クラスト鉱床、熱水鉱床の3つが有望な資源として調査開発が行われている。
太平洋に分布するマンガンの推定埋蔵量は2,000億トン(世界の陸上埋蔵量の75倍ほど)、ニッケル=90億トン、銅=50億トン、コバルト=30億トンと推定されている。こうした海底資源は人類共同の財産であることを国連海洋法が定め、この管理下のもと、調査・開発等に一定の投資をした国に鉱区が割り当てられ、排他的な採鉱を認めている。現在はマンガン団塊が対象だが、いずれ熱水鉱床やコバルト・リッチ・クラスト鉱床についても、同様な措置が取られることになるだろう。こうした採鉱権の獲得により、将来にわたる資源供給の安定化を期待できるものとなる。
日本では通産省の委託に基づき、金属鉱業事業団が昭和55年よりマンガン団塊の本格探査及び開発を開始した。結果、ハワイ南東沖に鉱区を取得し、昨年の段階で採鉱システムまでの実験を終わらせ、現在はコバルト・リッチ・クラストや熱水鉱床を主体にして調査を進めている。
△ 鉱物資源の宝庫、ニュージーランド沖海底火山調査 Kim Griggs
2002年5月6日 2:00am PDT ニュージーランド、ウェリントン発
http://hotwired.goo.ne.jp/news/news/technology/story/20020516306.html
太平洋にある海底の噴出口の周囲には豊富な資源が眠っていると見られる。1999年の調査では、採集したガスや水のサンプルに鉄分やマンガンが豊富に含まれていた。また、熱水の噴き出し口周辺の海底に金や銅、亜鉛、鉛が多量に堆積していることも確認された。
さらに、この地域の海底火山調査の大きな利点は、ブラック・スモーカーが他の海域よりもずっと海面に近い位置に存在していることだ。
ド・ロンド氏は言う。「戻ったら政府にこう言ってやりたいものだ。この火山の頂上には大量の銅がある。しかも、海面下ほんの数百メートルのところだ。いい知らせだろう、ってね」
△ 海水の淡水化
海水の淡水化については、日本でも、近年水源の乏しい離島等において事業化されている。なお、海水淡水化の費用は1立方メートル当たり概ね300円程度が必要とされている。更なる技術革新、大量生産により、コスト削減を目指し、国内の需要の何割かを賄い、さらには、飢饉、旱魃等がランドパワーで発生した場合の輸出用にできればよい。
△ 海洋エネルギー開発
海洋エネルギーの開発は、日本のみならず、世界的にも微少電力利用を除き、まだ実用化されていない。波力発電、潮汐発電、海上風力発電等につき、技術革新が待たれる。
これらの海洋エネルギーは、全て、シーパワー日本にとって、潜在的にエネルギー需要に応える可能性を持っているが、コスト面で高くついてしまうという問題から、実用化に至っていない。国家戦略として、設備の国費による大量生産を実施し、国が買い上げ、それを民間に貸与するなどの手法で普及させていくべきであろう。
△ 「メタンハイドレート」は日本のエネルギー源の救世主?
http://www.janjan.jp/living/0408/0408168085/1.php
「エネルギー供給を、大きな不安定要因を抱える原子力・石油に依存している日本にとって、豊富な新エネルギー源「メタンハイドレート(MH)」への期待が高まっている。
「MH」は「燃える氷」と云われ、シャーベット状の固体物質である。駕篭状の水分子が、メタン分子を包み込む化学構造であり、冷却と加圧により生成する。従って、「MH」からメタンを取り出すには、加熱したり、減圧したりすれば良い。
「MH」は、世界各地の水深500m位の海底や、陸上の永久凍土層で安定に存在し、全世界の天然ガス・原油・石炭などを合わせた総埋蔵量の2倍以上あると推定されている。世界各国はMHの研究開発を進め、各地での埋蔵が報告されている。
日本周辺海域でも、既に、千島海溝(十勝・日高沖)や南海トラフ(東海沖ー四国沖)などでの埋蔵が確認されており、今回の日本海での埋蔵の確認は、日本周辺にMHが豊富に存在する事を裏付けた。その埋蔵量合計は、現在の日本の天然ガス消費量の100年分以上あると推定されている。
日本のMHに関する研究開発は、10年前に本格化している。石油公団が1995年より進めて来た「MHの開発研究プログラム」を受け、2000年に当時の通産省に「MH開発検討委員会」が設けられ、「MH開発計画」を策定した。
そして、この実行計画を遂行するために、2002年3月、田中彰一東大名誉教授をリーダーとする「メタンハイドレート資源開発コンソーシアム(通称、MH21研究コンソーシアム)」が発足し、現在「フェーズ1」が進行中である。今後、「フェーズ2」を経て、2016年「フェーズ3」の商業生産準備のための最終評価を目指している。
様々な課題や難関を乗り越えなければならないが、この国家プロジェクトが、将来の日本のエネルギーを背負う資源としての展望を開いてくれる事を期待する。」
△ 海洋スペースによる都市建設(メガフロート)
△ メガフロートとは
http://www.srcj.or.jp/html/megafloat/
メガフロートはギリシャ語で大きいという意味の Mega と英語で浮体を表す Float を合わせた造語で、超大型浮体式構造物の事を指す。 海上都市としての利用が可能であり、海岸線が長い日本にはうってつけである。
以下のような利用が考えられる。
・首都機能を東京湾上に浮かぶメガフロートに移転する。
・進出企業への税制優遇を行い、経済センターをつくる。
・災害時の対応施設、非常用食料、設備の設置により、災害への対応能力向上をはかる。
・メガフロートに中東で利用されているような脱塩施設を設置し、水の補給を確保する。
・空港やレジャーセンターとする。
・物資集積基地
・IT化に伴うコンピュータ設置
△ 海上都市
本技術が確立し、海水の淡水化が低コスト化されたなら、長期的には環境悪化の観点から内陸部居住者の何割かを移住させ、更には地球温暖化の影響により海面上昇が現実化した場合、沿岸部居住者を移住させ、海上都市を建設することが可能となり、人類の持続的生存に資する。本技術の実用化により、日本の国土の狭小さは問題ではなく、海岸線の長さが重要な意味をもってくるのだ。そして、長期的に見た場合、本技術と原子力空母のエンジン技術を組み合わせ、移動海上都市を構築し、地球環境の悪化の程度にあわせ、常に最適な洋上(それは南半球を含む太平洋であろう)を自給自足が可能な生活圏としていくのだ。一定年齢以上の方ならひょっこりひょうたん島(http://www.nhk-sw.co.jp/chara/hyotan/)をご存知であろう。思い出していただきたい。以上
(江田島孔明、Vol.21完)
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