◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL22
江田島孔明
今回は、イラク戦争の見通しと、アメリカの未来を主観と憶測を交えて、可能な限り、推測してみる。
<参考>
http://www.geocities.jp/ntt21c/4n043u.html
”地政学的大失策が引き起こす、米国の衰退と世界の戦国化!!”★
イラクにおいて、反米攻撃がやまず、一向に沈静化の見通しが立たないどころか、一部では米軍は実質的に敗退しているという報道もある。世の識者、評論家の中には、現在の状況が理解できず、イラク戦争の見通しに自身が持てないまま事態の推移を見守っている人が多い。特に親米といわれる人々は、このような状況に対して無視を決め込んでいるとしか思えない。
<参考>
△ 「イラク情勢は悪化」 米長官、反米感情も認める
【ワシントン26日共同】パウエル米国務長官は26日、米ABCテレビとのインタビューで、テロや攻撃が頻発するイラク情勢について「悪化している。(テロリストらが)選挙を妨害しようと決めているからだ」と言明した。
また「反米感情は高まっている。否定はできない」とも述べ、アラブ社会が反対したイラク戦争やその後の情勢不安定化を受け、対米感情が悪化していることを認めた。
ブッシュ大統領は自身の選挙戦を意識して、先の国連総会での演説などで、イラク情勢の「進展」を強調しているが、長官の発言は不透明な現地情勢を踏まえ、より慎重な見方を示したと言える。(06:07)
△ 私は、昨年のイラク戦争開始前から、この戦争は泥沼化し、結果的にアメリカは敗退する。唯一それを避けるには、インダス川から紅海、地中海で囲まれたエリアを核攻撃により、根絶やしにするしかないことを主張してきた。よって、現在の状況はむしろ、私の予測通りといえる。何故、そのような予測が成り立つのか?それは私の分析手法が、歴史の法則を発見し、そこからの逸脱度合いを見て事の成否を判別するという、極めてシンプルなものだからだ。
△ この観点から、アメリカのイラク戦争は戦略的大失敗であり、アメリカの孤立、衰退、モンロー化と、結果として、世界の戦国化を生むことは、”地政学的大失策が引き起こす、米国の衰退と世界の戦国化!”でも書いたとおり。
△ では、私が見出した『歴史的法則』とは何なのか。
1、ハートランドの長期支配は不可能
まず、一つ目は「一つの政治権力でハートランドを長期間支配することは不可能であり、むしろ、ハートランドに手を出すと、その本国まで瓦解する」という世界史上のあるいは地政学上の法則だ。
アレクサンダー大王のマケドニアはインダス川まで攻め込み、ローマ帝国においてトラヤヌス帝は最大版図を確立し、パルティアに攻め込み、ペルシャ湾に達した直後から衰退が始まった。
更に、ナポレオンやヒトラーあるいはジンギスカンを例にとれば、ユーラシアハートランドへの遠征が、結局はその本国まで滅ぼす契機になったことを見れば分かるだろう。ナチスドイツは150個師団300万人でソ連に攻め込んだが、結局は敗退した。地域住民を敵に回し、消耗戦に巻き込まれたからだ。
さらに、「短期的支配」に限っても、この地域の支配には大量殺戮、敵対勢力の根絶やしが必要なことは、以前、述べた。
2、キリスト教徒やユダヤ教徒が、イスラム教徒を支配して上手くいった例は皆無
これは、十字軍や19世紀から20世紀にかけての植民地支配をあるいは、ソ連軍のアフガン侵攻の結果を見れば、短期的に見れば上手くいっても、結局は破綻し、かえって移民問題を生み、本国を乗っ取られることに繋がることをみれば分かる。
イスラム教徒は近代国家ではなく部族社会、宗教社会で生きており、一族の誰かが殺されると、必ず復讐するし、聖戦を聖職者が宣言すれば戦うことは宗教的義務となる。このような死を恐れぬ10億のイスラム教徒は、国境を超え連帯している。よって、米軍は10万ぐらいの兵力で、2千7百万のイラク人のみならず、10億のイスラム教徒を敵に回して、この地域を支配できるわけは無いのである。
<参考>
△ 米国家情報会議、イラク開戦前に反米闘争予測 朝日新聞9月29日
http://www.asahi.com/international/update/0929/004.html
米政府の「国家情報会議」が、イラク戦争開戦前の03年1月にイラク情勢に関する二つの機密報告書をまとめ、その中でイラク戦争後の事態について、反米武装勢力による暫定政府や米軍への攻撃が起きる可能性を予測し、ブッシュ大統領に報告していたことが28日、明らかになった。
同会議は中央情報局(CIA)長官の諮問機関。CIAは、朝日新聞の問い合わせに報告書の存在は認めたが、内容については機密を理由に明らかにしなかった。
ニューヨーク・タイムズ紙によると、報告書は、米軍がイラクに侵攻すればイスラム過激派への支持が高まり、イラク社会が武力紛争に陥ると予測。別の報告書では、旧フセイン政権の残党やテロ組織などが、連携または独自にゲリラ戦争を引き起こす可能性を警告していた。
ホワイトハウスのマクレラン報道官は28日、「大統領は戦争の決断を下した場合にどのような試練に直面するか熟知していた」と述べ、警告を受けていたことを認めた。同会議はイラク情勢について今年7月、「最悪の場合、内戦につながる」との悲観的な見通しを示した機密文書「国家情報評価」も作成した。 (09/29 12:18)
△ 米軍、住民に発砲=陸自輸送ルートで−多国籍軍への反発懸念・イラク
【ナシリア(イラク南部)28日時事】陸上自衛隊が活動するイラク南部サマワから約80キロ離れたナシリアの高速道路上で25日、米兵が道路沿いにいた住民に発砲していたことが28日、分かった。住民によると発砲で3人が負傷した。住民は「葬儀のために集まった人々を武装勢力と勘違いした米軍の誤射」と反発している。
現場付近はクウェートやタリル空港とサマワ間の物資輸送のため、陸自派遣部隊の車列が通過するポイント。多国籍軍への住民感情が悪化することが懸念されている。
△ (時事通信) - 9月28日17時2分更新
【バグダッド29日共同】来年1月のイラク国民議会選挙の全土実施を目指し、米軍は武装勢力が実効支配する中部ファルージャの奪回作戦に乗り出した。だが連日の空爆で家を追われ、疲弊した住民の反米感情は高まる一方。車爆弾を使った反撃も続発し、状況は泥沼化している。
米軍は市民の犠牲を否定するが、ファルージャの病院には巻き添えで負傷した子供や女性が次々と運ばれる。病院にいたアリ・アジズさんは27日、「路上で爆弾が爆発し、驚いた米兵が無差別に銃撃、親せきら3人が殺された」と憤った。
地元住民によると、中心街では大半の店が閉まり、住民の約半数が市外に去ったもようだ。機関銃を担いで歩き回っていた「イスラム戦士」も、米軍のスパイ活動を警戒して数日前から姿を隠した。一部はシリアやサウジアラビアなどから米軍と戦うために来た外国人で、治安部隊を狙った車爆弾による自爆攻撃にも加わっているとされる。
3、アメリカはユーラシアの縁(リムランド)でしか戦争をしたことがない
アメリカがユーラシアに本格的に関与してくるのは、第一次世界大戦以降のことであるが、アフガン戦争以前は、全てユーラシアの外縁部への軍事展開に留まっていた。第二次大戦でも欧州戦線では、内陸部のベルリン攻撃は行わず、ミュンヘンまでしか行かなかったし、朝鮮戦争でも満州を爆撃しなかった。湾岸戦争でもクゥェート解放に留まり、バグダット侵攻を行わなかった。これは、シーパワーとしての自己規定により、アメリカの戦略がリムランド支配に特化するというもので、極めて合理的判断といえる。
何故、アフガン戦争から、イラク戦争にかけて、いかにそれまでのアメリカの戦略である”From The Sea”ドクトリン(米海軍は92年に新しい戦略「フロム・ザ・シー」を打ち出し,沿岸海域の作戦へと重点を移している。)に基づくシーパワーとしてのリムランド支配戦略からの逸脱が行われ、ハートランド直接攻撃という戦略的下策を取ったのかを理解する必要がある。
個人でも、企業でも、それまで未知の分野に進出するときには細心の注意と下調べが必要であり、それなくしては必ず失敗するのは鉄則だ。そして、アメリカのアフガンからイラク攻撃は明らかにこの轍を踏んだのだ。
4、戦略的下策の背景
はっきり言えば、アメリカのユーラシアハートランド直接攻撃は、従来のアメリカの戦略から大きく逸脱する、「戦略的大失策」なのは明白であり、従来のアメリカの外交、軍事政策とは別の論理、力学で行われているということだ。
そして、その力学とは、過去何度も指摘したが、パールやウォルフォビッツに代表されるシオニストであり、シオニストと連携し、黙示録実現を望むキリスト教原理主義者だ。
911を契機として、それまで中東についてはアラブよりでイスラエルに冷淡であったブッシュ政権を彼らが乗っ取り、中東戦争にアメリカを引き釣り込んだというのが真相だ。
5、米兵の士気
嘘で練り固めた理由で戦地に送られ、日々攻撃にさらされ損耗を続ける米兵に士気の高さは望むべくも無く、実質的には、相当部分の米軍が戦力を失っていると見るべきだ。
△ 次回は、このよう状況で、アメリカの真の保守主義者とは何か、そして、日本はこのようなアメリカとどう付き合っていくべきかを検討したい。以上
(江田島孔明、Vol.22完)
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