◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL26
 江田島孔明

 今回は、日本の政官学会で密かに進む、「東アジア共同体」構想が、いかに日本にとって、致命的に危険であり、悪夢かを解説したい。

△ 東アジア共同体評議会
<参考> 東アジア共同体評議会  http://www.ceac.jp/j/
 「東アジア共同体」という言葉が、いま大きなうねりとなって、静かに、しかし着実に、東アジア全域を覆いつつある。昨年相次いで「東アジア・シンクタンク・ネットワーク」(北京)、そして「東アジア・フォーラム」(ソウル)の第1回会議が開催されたことも引き金となって、我が国においても、2004年5月18日に「東アジア共同体評議会(The Council on East Asian Community)」が設立された。」

△ 密かに進む通貨統合
 韓中日3国、通貨統合問題を論議中 日本大使が明かす
http://japan.donga.com/srv/service.php3?bicode=050000&biid=2004102884378
 高野紀元・駐韓日本大使は27日、韓国、日本、中国の3国間の通貨統合問題について「それに関する論議は以前から進められているし、(今後も)どんどん進展があるものとみている」と述べた。
 高野大使は同日午前、ソウル市内のハイヤットホテルで韓国地域政策研究院(宋庸植・理事長)主催で開かれた「韓日文化交流の現状と課題」をテーマにした討論会に出席し、「韓中日3国も欧州連合(EU)のように(通貨を)統合しようという提案をどうみているか」との質問に対して、このように話した。
 大使は、「(もちろん)通貨統合は一日にして実現するものではなく、アジア各国が政治的、経済的制度を充分に整備しなければならない問題だ」とし、「この問題(通貨統合)について韓日間でも協調する必要があると考える」とも話した。

△ 虚構としての「尭・舜の世」
 この他に、経済産業省の一部で日中韓統合を企んでるという話もある。このような構想の背景として、日本のエリート支配層には、抜きがたく、「アジア主義」、「中国事大主義」がある。戦前の大東亜共栄圏も、このような思想背景があったことを知る必要がある。日本では、江戸時代を通して、朱子学が官学とされ、儒教的観点から、中国を上国と崇める風潮が、特に知識階級に強く、この傾向は明治以降も基本的に引き継がれた。

△ 朱子学の基礎
http://www.edp.eng.tamagawa.ac.jp/~sumioka/history/china/ssi01.html
 儒教では、いわゆる古代中国の「尭・舜の世」を理想として、君子が徳をもって民を治め、禅譲を理想とする。しかし、儒教をベースとした日本のエリートは、このような古代中国が、実は伝説に過ぎず、実際の中国史は、政権交代が平和裏に行はれたことなど皆無であり、常に内乱と虐殺による、前政権の否定が現実だということを認めない。
 中国事大主義者は、中国4000年の歴史などと言うが、中国史は分裂と断絶の繰り返しであり、継続性のなさが特徴であることを認めないため、本質を見誤っている。4000年の歴史など全くの虚構だ。 
 中共の歴史と清朝の歴史はあきらかに断絶しており、民族構成も全く異なる別の国だ。中国と言う言葉は正確には中華人民共和国を指すことを考えると、中国の歴史はたった50年というのが正解であり、「中国4000年の歴史」など、そもそも大嘘だ。

△ 虚構としての「アジア」
 このような見方の背景として、「アジア」という言葉について、次の命題を提起したい。
 「国家や文明をアジアだ欧州だ、東洋だ西洋だと地理的な位置だけで分類するのは意味をなさない。」
 余談だが、私は「アジア」と聞くと失笑を禁じえない。「アジア」とは何か。古代ギリシャ人がエーゲ海を挟んだ対岸を「アジア」と呼んだのである。元の意味は古代トルコの沿岸部である。近代以降、ユーラシア大陸からヨーロッパを除いた地域を一まとめにした地域を指すことになる。この呼称は、ヨーロッパ人の「アジア」に対する無知を物語る。さらに許しがたいのは、近代以降、日本を含む「アジア」諸国が何の批判もせず、この枠組みを受け入れてきたことである。このパラダイムがいかに「アジア」および日本の近代を阻害し、機会損失を生んできたことか。
 「アジアは一つ」、「大陸の王道楽土」、「シナにゃ四億の民が待つ」、「38度線の北は花園」等の軽薄な論調にいくらの日本人が騙され、大陸に渡り、結果として大陸諸国民共々苦しんだか。全ての前提はこの明治以降の間違ったパラダイムなのであり、真のパラダイム、区分は「シーパワーかランドパワーか」という区分けなのである。
 そして、何よりも重要なことは、この両者はお互いの違いを認識し、相互不干渉を貫くべきで、両者の関与の度合いは必要最小限に留めるべきである。両者が必要以上に関わりを持つと、不幸な結果しかもたらさない。これは歴史を貫く黄金律である。
 もっと言えば、今までの世界史は人類にこの教訓を与えるために存在したと考える。このような視点から、私は虚構でしかない「アジア」という用語を用いない。

△ ランドパワー華北政権
 この観点から、日本は朝鮮半島や華北政権とは相容れないことがわかる。マインドが違うのである。このような視点から、鎖国について考えてみたい。江戸幕府が鎖国(選択的開国)を選んだ理由はいくつかあるが、一つには、明という華南シーパワー政権が滅び、清というランドパワー政権が大陸に樹立したためであろうと考える。
 華北政権と華南政権マインドの違いを何よりも理解していたのである。さらに進んで、鎌倉幕府が大ランドパワーたる、元(モンゴル)と外交関係を持たなかった点も評価したい。元の本質が狼(大ランドパワー)であり、外交関係を持つということがとりもなおさず、支配従属関係に陥ることを幕府執権平時宗(北条時宗)をはじめ、当時の鎌倉幕府御家人は正確に理解していたため、国書受け入れを拒否し、文永、弘安の二度にわたり撃退した。
 よく言われる台風(神風)のおかげのみで撃退できたのではない。鎌倉武士団が良く戦い、蒙古、高麗兵の上陸を許さなかったことが大きいのである。
 では結ぶべき相手はどこか。アメリカは別として、台湾と上海(華南)のシーパワー政権である。日本の古代から現代にいたる歴代政権は、華南の政権と良好な関係を構築していたことを、歴史に造詣が深い読者諸兄ならご理解いただけるであろう。上海と北京を分断し、上海を北京から独立させるように仕向けていくべきだ。
 ランドパワーとは、古代のペルシャや中世トルコ、モンゴルや近代のドイツ、ソ連に代表されるように、交易より、略奪に重きを置き、周辺地域の直接支配をエトスとし、放置しておくと、必ず、周辺のシーパワーを攻撃するという性質をもつ。
 彼らとの交易というのは決してありえず、シーパワーは彼らを封じ込めることを戦略の主眼とすべきだ。古代ギリシアや中世ベネツィア、戦後のアメリカがそうしたように。世界は今後、確実に戦国時代を迎える。備えが必要だ。

<参考>
 ペルシアの軍事的圧力のもとで、取引の公正が害されていた、
 古代アテネの格言:  「軍事は本当に儲からない。しかし、軍事が無ければ、もっと儲からない」
 近代英国の格言: 「平和を神に祈れ、しかし、火薬は湿らすな」

 私は、防衛庁の下記の準備を強く支持する。
△ 資源対立など3ケース想定 中国の対日攻撃可能性
 防衛庁が11月末にも策定する新防衛大綱に向けた部内協議で、中国が日本を攻撃する可能性について「海洋資源権益をめぐる対立」と「尖閣諸島領有権問題」、「中国・台湾間の紛争からの波及」の3つのケースを具体的に想定していたことが7日、分かった。
 今後の防衛力整備のための予測分析だが、中国の脅威に対する警戒感を強く示したもので、東シナ海のガス田開発や尖閣諸島をめぐり日中間で対立が続くなか、中国側の反発を招きそうだ。
 この想定は、防衛庁が9月にまとめた「防衛力の在り方検討会議」(議長・防衛庁長官)最終報告に明記された。アジア地域の軍事情勢を分析する中で中国の日本攻撃に言及している。同庁は最終報告を新大綱のたたき台と位置付けたため、公表しなかった。
 関係者によると、報告書は中国が「台湾や米国への対抗を念頭に軍事力を強化し、将来はアジア太平洋地域で最大の軍事力を持つ」と予測。(11月8日共同通信社)

△ アジア主義者の撲滅
 アジア主義者は撲滅する必要がある。まず、通貨統一のメリットだが、せいぜい為替変動がなくなるということぐらいだ。その代わり通貨統一すると、金融政策と財政政策が独自の判断でできなくなるという痛いデメリットがある。
 EUが長い間不景気から立ち直れないのはそのためだ。日本と韓国、中国じゃ発展レベルも経済構造も全然違うのに統一金融政策なんてできる訳無い。
 一番問題なのは、通貨統合したらヒト、モノの移動も当然自由化されるだろうから、日本に大量の中国人、韓国人が移住してきて、最早日本とは言えなくなってしまうだろうし、中国に民族的に飲み込まれてしまう可能性もあることだ。
 元々中華民族は革命期に政治的に作られた概念で、それまでは満州族、漢民族、蒙古族という区別はあったが、『中華民族』なんて概念は無かった。
 つまり大和民族を中華民族に含めるかどうかというのは、政治的都合で簡単に決められる。既に満州族と内蒙古のモンゴル人は漢民族に同化されている。
 現状でも、中国人や韓国人の犯罪の多さを考えれば、彼らを大量にVISA無しで受け入れるような事態になれば、何がおきるか、想像するだに恐ろしい。

△ 日本の植民地化を狙う中韓
 「東アジア共同体」なる悪夢が、今後実現する様な事態にいたれば、何が起きるか。まず、EUに習って、意思決定は人口比例の多数決となり、日本の発言権は中国の10%未満となる。中韓は体よく裏で組むだろうから、日本の発言権はさらに弱まる。そして、EUがドイツの金をフランスが毟り取るための道具だったように、日本の金は、今以上に中韓に吸い上げられる。
 その上、上述のように、大量の犯罪者の流入があり、治安の大幅低下を来たす。東京の池袋から新宿に至る地域がどのような状況か、都内在住者はご存知だろう。あれがもっと大規模に、全国に広がるのだ。在日外国人の地方参政権もこの文脈で考えるべきだ。
 つまるところ、東アジア共同体は中韓による、日本の植民地化に他ならない。この事実を冷徹に見極めるべきだ。このような点を意識的に伏せて、本構想を推進する論者は確信犯的北京政府の代理人だと断言する。外患誘致罪(刑法81条)の適用があってもいい。
 むしろ、日中国交回復以来の歴史の真相は、北京の代理人と化した売国政治家によって、日本の国益が大きく損なわれた歴史であった。現在、親中派政治家は次々と政界を追い出されており、その意味で「政冷」は当然のことといえる。町村外務大臣が親中派政治家の利権であった、対中ODAの廃止に言及したのはそういう背景で理解すべきだ。
 次号では、中国の経済的な見通しをたててみたい。 以上
(江田島孔明、Vol.26完)


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