
◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL28
江田島孔明
今回は、予定を変更して、ドル基軸通貨体制崩壊後の機軸通貨について、検討してみたい。
△ ドル機軸体制の終焉
以前から指摘していたことだが、ドルの暴落、基軸通貨の座の喪失がはっきりしてきた。
<参考>
△ グリーンスパンFRB議長、ドル資産需要の減退を警告
[フランクフルト 11月19日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)のグリーンスパン議長は、フランクフルト・ヨーロピアン・バンキング・コングレスで、外国の強いドル需要はやがて減退する、との見通しを示し、ドル相場に痛手を与えた。
グリーンスパン議長は、米国が過去最大となっている財政赤字を削減することを貿易不均衡の是正につなげるべきで、そうしなければ痛みの多い結果に直面する、と指摘。
ドルが急落するなか、ベルリンで開かれる20カ国財務相・中央銀行総裁会議(G20)への出席を前に、「経常赤字は、巨額であるにも関わらず、深刻な結果をもたらすことなく鎮められてきたが、われわれは安心することはできない」と述べた。
グリーンスパン議長は、米財政赤字の削減は、米国の貯蓄率を引き上げたり、経常赤字の穴埋めを外国にたよる体質を是正するための最善の方法と指摘。 「米国の政策イニシアチブは、世界経済や対外的調整を促す市場にある他の要因を強めることができる」と述べ、FRB要人、欧州の政策担当者、国際通貨基金(IMF)から高まる財政規律の強化を求める声に呼応する姿勢をとった。
議長は、「経常赤字の不均衡是正のための代替アプローチとして、国内投資を減らしたり、リセッション(景気後退)を誘発して消費を冷え込ませたりするのは、長期的な案として建設的でない」と述べた。
米経常赤字は、過去最高に達し、国内総生産(GDP)の5%以上を占めるまでになっている。
グリーンスパン議長は、外国人が最終的に、過剰なドル保有のリスクを小さくしたいと考えれば、より高いリターンを提供しない限り米国資産離れが起こり、赤字をますます維持不能なものにしていく、との見方を示し、「米経常赤字の規模を考えると、ある時点でドル残高を増やす需要の減少が発生するということが、説得力をもつようにみえる」と述べた。
ドルは、対円で4年ぶり安値を更新、対ユーロでも最安値に下落している。トレーダーは、グリーンスパン議長の発言は最近のドル安を黙認する姿勢を示したもの、とみている。
<重大な転機>
グリーンスパン議長の発言について、CSFB(ニューヨーク)の外為調査責任者、ジェイソン・ボナンカ氏は、「ここで議長が示しているのは、金融引き締めをしているものの、ドル安を望むということだ」とし、「これは重大な転機だと思う」と語っている。
すでにスノー米財務長官が今週に入って、ドル安に歯止めをかけるようとするどんな市場介入も米国政府は冷ややかな姿勢をとることを鮮明にしている。 スノー長官は17日にロンドンで、「市場性のない通貨の価値を押し付けることは、過去の事例からして、どうみても全くメリットがない」と語った。
グリーンスパン議長は、欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁、日銀の岩田副総裁と参加したパネル討論会で、米財政赤字の削減が、貿易赤字を縮小させるのに十分でなければ、後は「市場の力」で危機を発生させることなく、なんとかすることができるほど米国経済は柔軟である、と主張した。
過去に発言したように、グリーンスパン議長は、世界的な柔軟性の強化が、将来、経常収支の調整をするにあたってのストレスを少なくし、米国と欧州が双方の経済の耐久性を高めるためより努力する必要がある、と指摘した。
△ 背景としての米国のモンロー化
前提として、2期目ブッシュ政権のスタートから、アメリカの外交政策が国際協調派のパウエルを切ったことで、より孤立主義、単独主義的になることがはっきりしてきた。背景として、アメリカ人の「ランドパワー化あるいはモンロー化」があり、シーパワーの本家国際金融資本に背を向けだしたことがあることを以前述べた。
もっとはっきりいえば、ブッシュは社長になったことが二回ある。そしてこれまでに会社を二つ潰した。今度で三つ目だということだ。彼は、経営者には向いてない。だから資本家に見放された。それだけのことだ。
<参考>
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000091303
「ブッシュ再選の真の意味は、対テロ戦やイラク戦争への支持ではなく、「アメリカ人の先祖がえり」だ。ブッシュに投票した人の大半は、イラク戦争を含む、海外のことには全く関心が無い。イラク戦争は争点ではなかった。NYからの国際金融資本の逃避、有色人種の締め出しが、今後、確実に起きるだろう。」
△ 基軸通貨国の条件
基軸通貨とは、国際貿易決済の共通通貨という意味であり、近代以降、英国のポンドと、米国のドルしか存在していない。基軸通貨国の条件とは何であろうか。重要な点は、以下のとおり。
1、自由貿易体制をとり、国際貿易に占める比重が大きく、主要な買い手である。
2、宗教的、経済的自由が有り、世界中にネットワークがあり、情報が集まり、商取引の舞台となる。
3、通貨価値の裏づけがある。(かっては金、現在は軍事力)
4、最大の取引商品である、原油の決済に用いられる。
5、世界の海上交易の自由を保障する海軍力をもつ。
これらの諸点について、現在のアメリカは(5)の条件を除き、失いつつあることがわかる。中東戦争の継続により、陸軍優先となり、いずれこの条件も失われていくだろう。原油決済がユーロに移行したらアウトだという意見もある。
ブッシュ政権は、この基軸通貨の維持に関心を有しておらず、その意味で国際金融資本とは利害の一致がない。すなわち、国際金融資本はアメリカドルを見捨てる覚悟を決めたということだ。それが、上述のグリーンスパン発言の真の意味だ。
△ ユーロの脆弱性
ユーロはドルを代替する基軸通貨となれるだろうか。
私はそうは思わない。何故なら、EU自体に不安定要因が非常に大きく、統一憲法も批准されないだろうし、むしろ分裂の可能性がある上に、本質的にランドパワーつまり、ローカルパワーであり、世界の貿易の守護ができるほどの海軍力を有していないからだ。中ロとの反米を目的とした連携も、いつまで持つかわからない。
ランドパワー同士の同盟は容易に破綻するのは世界史のセオリーなのだ。今後も独仏が足並みを揃え続けることができ、EUの分裂がないと仮定しても、ユーロはあくまで、欧州とその周辺国で使われる地域通貨にとどまるだろう。
<参考>
http://backno.mag2.com/reader/Back?id=0000091303
「日本の戦前の半島経営が在日朝鮮人の問題を生み、欧州の植民地支配は移民問題を生み、アメリカの西海岸支配はヒスパニック系住民の大量流入を生んだ。アメリカは21世紀にはヒスパニック国家になるだろう。このようにランドパワーを支配すると、短期的にはうまくいっても、やがては彼らに国を乗っ取られる。最初の例が古代ローマの拡大だ。EU拡大も同じ轍を踏む。EU拡大をみてもわかるが、ランドパワーは土地や人口の増大、ハートランド志向を本能とする。
EUは近代そして現代の価値が「情報支配」にあることを忘れ、ランドパワーの落ちた罠におちることが明白だ。重要な点として、このような地政学的対立の最前線である東欧を長期間支配した帝国はかって存在したためしがない。EUはその最初の例になれるだろうか。甚だ疑問である。」
<参考>
ウクライナ大統領選で親露派が当選したことにより、ロシアの「ソ連回帰」がより鮮明になるだろう。5000万のスラブ系住民と豊富な資源、黒海を通じた地中海および、中近東へのアクセスをもつこの国がロシアと組んだことの地政学的影響は、ブレジンスキーもその著書”The Grand Chessboard”のなかで述べてるように、非常に重要だ。ロシアがソ連の旧領を回復する上でウクライナは最も重要な拠点だからだ。私にはプーチンはスターリンもしくはヒトラーの再来のように見える。EUは対露政策を根本的に見直すべきだ。現ロシア指導者のほとんどがソ連時代のKGBの生き残りであり、赤の広場にいまだにレーニン廟が安置されていることの意味を考えたほうがよい。
△ 大統領府突入も、実力行使警告=首相は和解呼び掛け−ウクライナ情勢緊迫
【キエフ22日時事】ウクライナ大統領選挙の決選投票で親ロシア派のヤヌコビッチ首相が当選確実となったことに反発する野党指導者、ユシチェンコ元首相の陣営は22日夜、首都キエフ中心部で10万人規模の集会を開き、23日に緊急招集される議会が選挙結果見直し措置を取らない場合、大統領府への突入も辞さないと警告した。同陣営は「23日が決定的な日になる」とし、選挙結果修正を目指して街頭行動を繰り広げる構えを示した。
これに対し、ウクライナの検察当局や内務省、情報機関は22日夜、「あらゆる不法行為を断固かつ早急に終了させる用意がある」と警告する共同声明を発表。ウクライナ情勢は衝突の恐れもある緊迫した段階に入りつつあり、一両日がヤマになるとみられる。
一方、ヤヌコビッチ首相は同日夜、選挙後初めてテレビに登場して演説、国民に「和解と団結」を訴えるとともに、「バリケードを築くよう扇動する政治家は理解できない」とユシチェンコ氏を非難した。(時事通信) 11月23日9時1分更新
△ 基軸通貨は円
ドル以降の基軸通貨として、円の可能性を考えてみたい。日本はかって、円経済圏をアジア諸国において作ろうとして、アメリカに阻止されたことがある。1998年10月、アジアの通貨・経済危機に際して、日本政府が300億ドル規模の支援を行うことを決めた(宮沢構想)が、この第一次支援枠はその後半年間に総額の半分を超える166億ドルが消化され、アジア諸国の不況からの脱出に貢献した。宮沢蔵相はさらに、五月のAPEC蔵相会議の場で、アメリカ・世界銀行・アジア開発銀行等と協議して、アジア各国の国債を保障し、政府の資金調達を支援する構想を示した。その際、宮沢首相はサマーズに、「アジアの貿易を守護しているのは第七艦隊だ!!」と啖呵を切られ、円圏の樹立は沙汰やみとなったという。
この言葉の真の意味は、「基軸通貨国は、自由貿易の守護のため、制海権を保持できる、最強のシーパワーすなわち大海軍国でなければならなければならない」だ。
考えてみれば、かっての英国も、そして戦後の米国も基軸通貨国は「最強の海軍国」でもあった。そして、日本に欠けている条件は、まさに、この点のみである。しかし、最近、この点に関して、大きな事件がおきた。
△ 中国海軍潜水艦領海侵犯事件の意味
いうまでもなく、11月10日に発生した、中国海軍の領海侵犯事件である。この事件の意味することについて、マスメディアにおいて語りつくされてる感があるが、私がみるところ、非常に重要な点が、意識的に報道されていない。それは、一言で言うと、「海上自衛隊+第七艦隊と中国海軍とでは、その能力において、「月とすっぽん」以上の格差があることを全世界に知らしめたということだ。
一部の軍事関係者の間では常識であったものが、あまねく全世界に証明されたということ。これは、現在の海戦の勝敗というものが、潜水艦の優劣によって定まるということを知っていれば、中国海軍の「最新鋭原潜」が、その出航から帰港まで、全てを日米の監視下におかれたということの意味は重要だ。
中国と日米が台湾や尖閣を巡って開戦した場合、その秘匿性のなさから、有事において全く使い物にならず、開戦数時間で全滅させられるということを意味し、中国海軍が目指す、グアムまでを射程にした、1000海里防衛構想など、「夢の又夢」だということだ。これは、要するに、実質的に中国による台湾侵攻の「絶対的不可能」を世界にさらした結果といえる。
これは、別の見方では、東シナ海の制海権は米軍の情報網があれば、海上自衛隊のみで十分確保できることを意味する。
つまるところ、今回の潜水艦事件というものは、日露戦争における、英国の情報を得て、完全勝利した、日本海海戦と同じような意味があったのだ。はっきりいえば、今回の潜水艦事件が米軍の通報によって海上自衛隊が動いた点を考えると、アメリカの日本に対する「仮免許卒業試験」であり、日本はそれを高得点で合格したのだ。
ここがわかっている世界の海軍関係者、市場関係者さらに、ASEANや香港、上海、台湾は今後、なだれをうって、日本につくだろう。この期待にこたえなければならない。
△ 日本単独による制海権保持
さらに、さかのぼって、北朝鮮工作船の海上保安庁による撃沈以降、「米軍の好意的中立(情報提供)の下、マラッカ海峡以北の制海権は日本海軍で確保する」ということが日米の了解事項であり、今回の事件はその実地演習という意味もある。これは、長期的に見た場合、アメリカのアジア撤退への準備とも言える。
△ 基軸通貨の条件
日本に唯一足りなかった、自由貿易体制の守護者として「制海権確保」の条件がそろえば、かっての宮沢構想では、民主党のアメリカによってつぶされた円経済圏であるが、国際金融資本がブッシュ政権を見限り、本当に東京に拠点を移し、円を基軸通貨にする条件がそろったといえる。世界の投資家もそのように判断したらしく、円が上昇に転じた。
△ NY円大幅反発、一時4年8カ月ぶりの102円70銭
19日のニューヨーク外国為替市場で円相場は大幅反発。前日比1円10銭円高・ドル安の1ドル=103円10―20銭で取引を終えた。グリーンスパン米連邦準備理事会(FRB)議長が米経常赤字の持続可能性に懸念を示したことから、円買い・ドル売りが優勢となった。
19日朝、グリーンスパン議長はドイツのフランクフルトで講演し「現在の米国の経常赤字の規模を考えると、いずれドル資産への投資意欲は減退する可能性がある」と警告した。為替介入の効果にも疑念を示したことから、対主要通貨でドル売りが加速。円相場は一時102円70銭と、2000年3月以来ほぼ4年8カ月ぶりの高値を付けた。米政府が経常赤字削減のためにドル安を容認するとの思惑も、ドル売りを誘った。
ただ、ベルリンで開催中の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明や、来週予定される米中首脳会談の行方を見極めたいとの見方も多く、午後にかけて円はやや上げ幅を縮めた。原油先物相場の急反発も、日本経済への悪影響の懸念から円の上値を抑えた。この日の円の安値は早朝に付けた103円76銭だった。
円は対ユーロで4日続伸。前日比75銭円高・ユーロ安の1ユーロ=134円25―35銭で終えた。円は対ドルで売られたのにつられ、対ユーロでも売りが膨らんだ。
ユーロは対ドルで反発。前日終値の1ユーロ=1.29ドル台後半から1.30ドル台前半に上昇した。グリーンスパン議長の発言を受けてユーロ買い・ドル売りが優勢となり、ユーロは1.3070ドルまで上げ幅を拡大する場面もあった。
〔NQNニューヨーク=千田浩之〕
△ 通貨の裏づけとしての「環境」
当たり前のことだが、通貨はそれ自体では、ただの紙切れの証文でしかなく、裏づけが必要だ。その裏づけは、かっては金であり、ニクソンショック後は、アメリカの軍事力であったといえる。ドル暴落以降の基軸通貨国の裏づけとは何であろうか。金やレアメタルについては、掘削技術や調査技術の進歩により、実は希少性に疑問があるという説もある。よって、裏づけとはなりえない。海軍力を含む軍事力の重要性は今後、増すであろうが、私は、それに付け加えて、通貨の裏づけとして「環境」をあげたい。
つまり、水を含む地球環境について、今後、人が生きていける地域は限定されていくということだ。この点、日本は今年の台風の多さを考えても水不足はありえない。台風の犠牲者には気の毒だが、旱魃より淡水の補給でもある台風のほうが望ましいということを知るべきだ。更に言えば、少しでも海外で暮したり、仕事をした経験がある人は、日本人の温和な性質に裏打ちされた民度の高さ、勤勉さ、町の綺麗さ、分裂や内乱の心配がない安定した政情等、「社会環境」の面で世界で最高の国だということを理解してもらえるのではないだろうか。日本人は平均寿命、平均知能指数ともに世界最高なのもこのことを裏付ける。このことに、白人を含む世界中の人間が気づきだしたようだ。21世紀の地政学は、この環境の観点から構築されなければならない。
今後、分裂と内乱を迎える、ユーラシア全域(主に中国)と米国からの移住希望者は急速に増えるだろう。これら希望者を国益の観点から「選別」していくことが必要だ。イギリスやアメリカがシーパワーとして発展できたのは、大陸欧州で宗教的迫害を受けたユダヤ人を多数受け入れたからだ。
日本も真にシーパワーを目指すなら、国籍に拘らず、高度な技術をもった優秀な人材を受け入れる必要もあるだろう。逆に、単純労働名目の移民受け入れは古代ローマ帝国がゲルマン人に飲み込まれたようなるので、反対だ。中国やインドの優秀な人材は国を捨て、日本を目指している。シーパワー戦略において、彼らとどう向き合うか、今後の重要な課題だ。
近未来を眺望すると、ユダヤ系、中国系、インド系の最優秀の人材は、日本人の勤勉性、均質性とあいまって、日本を舞台にして、かっての大英帝国のようなシーパワー戦略を展開していくと考える。私は、彼らとの交流を通じ、この確信を得た。
特に、上海出身の親日派のエリート層をどうやって遇していくかが、非常に重要になる。この点に関して、次回はシーパワー戦略として、北京と上海の対立、内部分裂を述べてみたい。
六本木ヒルズに代表される東京の変貌(摩天楼化)も、この観点で考える必要がある。
通貨としての円を、この世界最高の自然や社会環境をもつ「日本への移住権」と考えると、円の将来性は「買い」となる。
確かに、日本は自国民への公的債務が1000兆あるが、地球環境問題に比べれば、些細な問題だ。映画”The Day After Tomorrow”をご覧になった方はお分かりだろうが、アメリカからメキシコへ避難する際の条件は「対米債務棒引き」だったのだ。債務など、地球環境悪化の前では、その程度の意味しかもたない。
環太平洋連合の基軸通貨は「円」となるであろう。 以上
(江田島孔明、Vol.28完)
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