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◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL33
 江田島孔明

△ 海軍の連帯
  国境を越えて世界的連帯を有する組織として、大きく三つある。
 1.イスラム教徒
 2.カソリックキリスト教徒
 3.海軍
である。3者に共通するものは、その国際性と仲間意識だ。
 例えば、日本海海戦において、ロシアバルチック艦隊を全滅させた連合艦隊司令長官東郷平八郎は、佐世保海軍病院にロジェストウェンスキーを見舞った際、「閣下は軍人としてお国のために尽くされた、ゆっくり療養されよ。」として手を握り、ロジェストウェンスキーは感涙に咽んだという。また世界の海軍関係者は、階段の下り方を見て、海軍関係者か否か分かるという。
 日本の海上自衛隊が、その実態は第七艦隊の補完部隊にすぎず、国軍とはいえない現状に鑑みて、現時点では実質的な「海軍」である海上保安庁を核にした環太平洋連合諸国共同の海上哨戒体制を構築し、「共通利益」と相互扶助を確保する必要がある。そのために、日本が主導し、国費を投入し、環太平洋・コーストガード・アカデミーを樹立し、域内の人材養成を図ることは非常に意義があり、今すぐにでもできることだ。
 長期的に考えると、テロ戦争の継続によりアメリカが衰退し、第七艦隊が大幅に削減される可能性を考慮すると、海上自衛隊を含む、域内海軍の連携樹立も必要であり、ASEANや豪州から、そのオファーは既に出ている。

△ 豪与党、日本に積極的役割促す…環太平洋安保で
 【シドニー=樋口郁子】オーストラリアのジョン・ハワード首相が率いる与党・保守連合は5日、環太平洋の安全保障において、日本を「豪州の重要なパートナー」と位置づけ、日本に対して今後、より積極的な役割を果たすように促すことを盛り込んだ外交政策を発表した。
 9日に実施される連邦議会選挙に向け発表された。この中で、保守連合は、豪州は日本と経済、安全保障上の重要な利害をともにすると認識。「日本の安保政策における憲法、政治上の制約は緩和されつつある」として、今後、日豪の安保関係はますます重要になるとの見方を示した。
(2004/10/5/22:28 読売新聞)

△ ロシア、PSI訓練に幹部初派遣 艦艇参加は見送り
 ロシアのプーチン政権は6日までに、東京湾沖で今月下旬に実施される大量破壊兵器の拡散防止構想(PSI)に基づく多国間海上訓練に、国防省幹部らを初めて派遣する方針を固めた。
 複数の外交筋が明らかにした。訓練を主導する日本側に近く正式に通知する。艦艇参加は見送り、事実上のオブザーバー参加となる。
 訓練は北朝鮮の艦艇臨検などを想定しており、ロシアが艦艇派遣を避けたのは、北朝鮮への刺激を避けるためとみられる。北朝鮮は日本主導の演習を「米国の北朝鮮孤立化政策に追従する行為」と厳しく批判している。
 一方でプーチン政権は、航空機同時爆破や学校人質事件など8月から国内で相次いだ大型テロを受け、国際テロ組織の大量破壊兵器獲得に強い警戒感を表明しており、幹部派遣によって、PSIに前向きの姿勢を示した形だ。
 PSIは米国のブッシュ政権が提唱。昨年9月にオーストラリア沖のサンゴ海で初めての臨検訓練をした。東京湾沖の訓練は、ロシアのPSI参加後、最初の本格的な実地行動で、日本の招待に対するプーチン政権の反応が注目されていた。(共同) (10/06 09:20)

△ このような観点から、私は、WTOや国連といった多国間協議の場を重視しつつも、アジア太平洋圏に共通利益を有するシーパワー同志の連携による経済圏、安全保障の枠組みを形成することが必要ではないかと考える。
 アジアを重層的に考え、中国を中心とする大陸アジアとASEANに代表される海洋アジアを考えた場合、前者をランドパワー後者をシーパワーと考えることができる。
 日本の場合、ここでいうところの海洋アジア(ASEAN諸国特にシンガポールを核とした国々)を中心とし、日本・オーストラリアを頂点とするシーパワーの国々と連携した経済圏を構成すべきである。
 また、海洋アジアの国々は発展段階こそばらばらであるが、各国とも今の日本にない可能性を持っている。これらの国々と提携して、経済圏を構成するメリットは非常に大きいと思われる。さらに忘れてはいけないのは、この地域は親日的な国家が多く中国への対抗の意味から日本のコミットメントを求めているのである。
 距離的な問題は、この圏内はほとんどが海運の使用でまかなうことができる。時間的には陸運の方が有利だが、コスト的には海運が数段優位性をもつからである。
 シーレーンの防衛問題も、オーストラリア及びASEAN諸国と提携することによって解決することが出来る。
 よって、あくまでシーパワーの真髄たる、制海権の保持と交易自由を死守するという戦略がベストであると考える。注意すべき点として、日本には、歴史的に見てもこの制海権、シーレーンを重要視しないことが多々ある。現在も、アメリカの第七艦隊の軍事的プレゼンスに頼ることによって、日本の中東へのシーレーンは安全が、どうにか確保されている状況を自覚する必要がある。
 湾岸戦争時、日本のタンカーを護衛したのは米海軍であったことを忘れるべきではない。しかしながら、このアメリカ軍のプレゼンスが永続する保障はない。上述のアメリカの衰退の章で述べたことが現実化し、日本のシーレーンを日本の自力で確保しなければならない事態が訪れるときが、そう遠くない時期に訪れる可能性もある。この問題にどう対処すべきか。戦後の日米安保が日本に提供したサービスとして、以下の2点が挙げられる。
 @)中東産油国からの原油輸送路(シーレーン)確保
 A)大陸アジアからの脅威に対する抑止

△ 戦後、日本はこの点について、在日米軍(第七艦隊)に依存してきた。今後、永久にこの点が保証されるとは言い切れない。沖縄、横須賀を核にする在日米軍基地の存在意義はあくまで、アメリカがアジア全域、更には米国の国家戦略上最重要な中東地域への戦力投射能力を担保する中継基地なのであり、上記は日本を中継させてもらっている手前、おまけのサービスとして提供していたにすぎないのである。ここは重要である。
 在日米軍の兵力構成を見ればわかるが、日本本土防衛を担うはずの米陸軍は存在せず、空軍、海軍、海兵隊なのである。いわば槍を置いているのであり、盾は自衛隊が担うのである。この点が在韓米軍と根本的に異なる。在韓米軍はあくまで北朝鮮に対抗するための陸軍なのである。
 アメリカが上記サービスの提供を停止した場合どうすべきか。取りうる政策としては以下の通りである。
 @)日本は、東南アジア諸国連合(ASEAN)と安全保障関係を結ばざるを得ない。
 A)東南アジアにおいて、アメリカのプレゼンスが希薄になれば、シーレーン支配に関してそれに代わるのは日本しかないという認識が一般的になりつつある。
 B)インドとの長期的関係を結ぶ。同時にインドネシアと、シンガポールとも関係を結ぶ。
 W)日本海上自衛隊の増強の第1段階が完了した段階で、シンガポール(さらに可能ならフィリピンスビック湾にも)にシーレーン監視用の基地を設置させるよう交渉する。
 X)インドに対し、適切な規模の海軍を開発するよう、援助する。
 Y)インド洋に進出し、ホルムズ海峡からシンガポール、日本までのシーレーン全補給線を支配するように努力する。

△ 環太平洋諸国との海上安全保障体制
 要点は、日本が一国の独力だけでシーレーンの安全を確保することは困難である以上、環太平洋諸国との海上安全保障体制を確立する必要があるということである。この場合、どの国と安全保障体制を組むか、その際の仮想敵はどこかが問題になる。
 南沙諸島における中国と周辺国の紛争、中国とインドとの関係、印パ紛争などの国際関係に鑑みると、インドと同盟関係を確立するということは、必然的に、パキスタンを含むイスラム諸国を敵に回すということにつながる。アジアにおける安全保障体制の確立についても、これらをいかに調整するかという問題が生じる。インドとの軍事同盟は長期的観点から考慮に値するとしても、現時点では否定的にならざるを得ない。あくまで、海上哨戒の提携協力関係にとどめるべきだ。
 問題は、日本の海上自衛隊の構成である。朝鮮戦争以来、アメリカ第七艦隊の補完部隊として、主に対潜哨戒能力を中心に拡充してきた。独立した海軍力ではないのである。上述のアメリカの衰退という事態が現実化し、海外への米軍派遣が段階的に縮小した場合、第七艦隊独力による極東から中東にいたるシーレーン防衛は困難になり、海上自衛隊、保安庁共同によるマラッカ海峡から日本までの哨戒、制海権確保が要請されることになろう。
 近い将来、この海域に、中国の空母が出現することも想定される。その際、独立して運用できる海軍力の整備維持の観点から、中規模空母の保有が必要になる。空母機動部隊の開発、維持はコストがかかり、カタパルトや早期警戒機の開発など、技術的な問題も多い。
 よって、横須賀基地を母港とし、退役を迎える予定のキティホークをアメリカから格安で譲ってもらい、試験的に海上自衛隊で運用する。艦名は太平洋戦争の最高武勲空母にちなみ、「瑞鶴」がいいだろう。
 更に進んで中国の核ミサイルに対抗するため、日本の核武装が検討されるようになるかもしれない。その場合は潜水艦発射型SLBMしかない。この保持についてはアメリカの意思が重要である。現時点ではアメリカは日本に核の傘を提供しているため、日本の核武装に反対であろう。日米安保を堅持する立場からは時期尚早と判断せざるをえない。日本の核武装はCTBT体制崩壊をもたらし、小国の核武装に道を開く。しかし、極秘に戦略源潜「やまたのおろち」と潜水艦発射型SLBM「草薙の剣」を開発し、核恫喝を受けた場合は、核恫喝で応えることも必要かもしれない。
 日本に核の傘を提供し、抑止力となる在日米軍基地はアメリカの世界戦略の要であり、かつ、日本に対するお目付け役として、冷戦期の米軍配置状況を見直しから911以降の対テロ戦に対応するため、小規模な機動力に富む米軍を全世界に展開していく上で、海兵隊や空軍力の縮小はあっても、海軍基地の全面撤退はあり得ないと考える。

<参考>
 下記記事だが、中国は台湾攻撃の意思が無いことを表しているとみるべきだ。軍事常識として、本気で攻撃しようとすれば、その意図を秘匿して、奇襲攻撃を狙うものだからだ。日本の真珠湾やドイツのポーランド攻撃等。脅しをかけてくるというのは、それだけ北京が追い詰められているとみるべきだ。過剰な反応はつつしみ、冷静に対処する必要がある。恐れる必要は全くない。
△ 2004年12月22日(水) 「李登輝氏戦争メーカーにも」
 中国大使、日本を批判 ビザ取り消し要求政府は二十一日、台湾の李登輝前総統に入国査証(ビザ)を発給した。これに対し、中国の王毅駐日大使は同日午後、都内で開かれた日本経団連評議員会の会合で講演し、「(李氏は)トラブルメーカーだけではなく戦争メーカーになるかもしれない。考え直していただきたい」と述べ、ビザ発給の取り消しを求めた。続いて講演した町村信孝外相は「私人が来ることを止める理由はない」と述べ、取り消す考えはないことを強調した。日中対立は激しさを増している。
 小泉純一郎首相の靖国神社参拝などをめぐって「政冷」が強まる日中関係だが、王大使は講演で「台湾問題は中国の国益の最も核心的な部分」との考えを強調。その上で王大使は「(李氏は)台湾独立勢力の代表人物。分裂活動を推し進める急先鋒(せんぽう)だ」「死にものぐるいで中国を中傷、攻撃している人物に、日本側が好意を示すことは理解に苦しむ」とビザを発給した日本政府を批判した。
 さらに王大使は「回復の兆しがようやく見え始めた中日関係にも再び衝撃を与える。日本側にとってもマイナスになる」と指摘。小泉首相が十一月にチリとラオスで胡錦濤国家主席と温家宝首相と相次いで会談したが、この発言はビザ発給問題で中国側が再び首脳会談を拒む可能性を示唆したものといえる。
 王大使は歴史認識についても言及。「歴史に関する問題は両国の国民感情と二国間関係の健全な発展に影響している現実問題となっている」と指摘。「残念ながら今日にいたっても歴史に正しく対処できない言動が時々現れている」と、小泉首相の靖国参拝を批判した。
 王大使の講演のテーマは「日中関係のチャンスとチャレンジについて」。
 王大使は「中日経済協力には明るい未来と大きな潜在力が存在している。共同発展を実現することは十分可能だと信じている」と述べる一方で、日本企業が中国で大型事業を受注することが難しくなっているケースがあることを指摘。「こうした変化の原因はいろいろあるが、両国の政治が抱えている障害が明らかにマイナス影響を及ぼした」と、「政冷」は「経熱」も冷ましかねないとの見方を突き付けた。
 王大使は今年九月に駐日大使に着任した。中国外務省の日本課長などを歴任した知日派で、今回の講演もすべて日本語で行った。王大使は将来の外相の有力候補ともいわれている。日中関係が厳しさを増す中、大使着任後は、小泉首相の靖国参拝を批判し続けている。
 この日の会合には当初、小泉首相と王大使が同席する予定だった。だがビザ発給で中国側が日本政府への批判を強めたため、官邸サイドが王大使との同席を避けるよう申し入れ、会合ではすれ違いに終わった。

△ 台湾独立阻止へ「反国家分裂法」審議開始…全人代
 【北京=竹腰雅彦】新華社電によると、中国の全国人民代表大会(全人代=国会)常務委員会は25日、台湾の独立阻止と平和統一を目的にした「反国家分裂法」草案の審議に入った。早ければ来年3月の全人代で採択される見通し。同法は、陳水扁総統が実施を表明している住民投票による新憲法制定など、中国が批判する台湾の「法による独立」の動きに対する対抗措置。温家宝首相が今年5月、初めて必要性に言及し、国務院(中央政府)台湾事務弁公室も「中台統一を法的手段で促進するため、真剣に検討する」としていた。
 内容は明らかにされていないが、独立に当たる行為の定義や独立行為への制裁措置、統一に向けた具体的手段などを明記する見通し。中国筋は「同法により、両岸(中台)に関係する台湾でのいかなる住民投票も不可能になる」と指摘している。 (2004/12/25/20:30 読売新聞)  以上
(江田島孔明、Vol.33完)


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