
◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略VOL36
江田島孔明
△ 米軍の関与
ここまで、アメリカ軍の関与が無い場合を想定して検討してきたが、現実にはアメリカのオハイオ級戦略原潜(後述)は常時、2000発近い戦略核ミサイル(一発の威力は長崎型原爆の10倍以上)で中国全土を狙っている。そして、アメリカの核は未臨界実験を繰り返すことにより信頼性を維持されており、10年以上核実験を実施していないため、信頼性に非常に大きな疑問がある中国の核に比べて真剣と竹光ぐらいの違いがある。
よって、もし中国に核使用の動きが見られたら、衛星で直ちに把握し、全土が数十分のうちに確実に灰燼になることになる。それ以前に、核ミサイルを用いるまでもなく、トマホークにより中国の核は十分無力化できるだろう。中国側もそのことは分かっているので、核使用を決断することは絶対にない。
なお、アメリカの核の傘を信じてもよいのかとの議論は常に存在する。この点に関して、クリントン政権時代、中国がアメリカに核の先制使用をしない旨の相互条約締結を持ちかけたことがある。この提案の骨子は、「中国が台湾や日本を核攻撃しても、アメリカは核で反撃しない」ということを約束するものだ。
親中派のクリントン政権ですら、この申し出を拒否したことはいうまでもない。つまり、アメリカの核の傘は健在だといえる。そして日米安保の日本側のメリットとはこの「核の抑止力」にあるのだ。
<参考>
オハイオ級原潜
http://www.f5.dion.ne.jp/~mirage/hypams05/s_oh1.html
オハイオ級の主な兵装は、弾道ミサイル24基と533mm魚雷発射管4門である。オハイオ級が装備するトライデントは、1基につき核弾頭をC4は8発、D5は14発まで装備可能だが、これもSTART Iとの関係から現在のところの弾頭は最大で8発に抑えられている。
つまりトライデントを24基装備するオハイオ級は、1隻で計192発程度の核弾頭を装備することになる。核弾頭1発あたりの威力は数種類あるが、いずれも100kt〜475kt(長崎に落とされたファットマンは20kt程度)と都市一つを破壊するには十分な威力を備えており、オハイオ級1隻で日本を火の海にすることも十分可能である。
なおこの先START IIではSSBNに搭載できる核弾頭の総数は、1700〜1750発程度までとされており、それにあわせてトライデント1基に搭載する弾頭数は4〜5発程度まで減らされる予定である。
オハイオ級の主任務は弾道ミサイルの発射で、敵潜水艦への攻撃はロサンゼルス級などの攻撃型原潜の任務であるが、発見された場合の反撃手段としてMk48魚雷も搭載する。
このように現実的に考えれば、日中間が熱戦に至る可能性は非常に低い。しかし、それは日本が戦争準備を怠らないという前提で初めて言える。むしろ、台湾や尖閣や海洋資源を巡って、日米安保を堅持し、徹底的に戦う姿勢を鮮明にすることが結果として戦争回避に繋がると考える。
ランドパワーとの対応の仕方は、宥和策が大戦を生んだミュンヘン会談と核戦争を辞さずという強行姿勢が和平を生んだキューバ危機にこそ学ぶべきだ。キューバ危機以降、ソ連が米国を恫喝することはなくなったのだ。それがその後の冷戦でのアメリカの勝利に繋がった。このように考えると、台湾、尖閣、海洋資源を巡り、日中が戦争に至る可能性は低いと考える。
<参考>
太田述正コラム#169(2003.10.13)
<イスラエルの核への米国の協力>
http://www.ohtan.net/column/200310/20031013.html
<参考1:各国の保有核爆弾数>
ロシア :8,232
米国 :7,068
中国 : 402
フランス : 348
イスラエル: 100〜200前後
英国 : 185
インド : 50〜100
パキスタン: 50〜100
北朝鮮 : 2〜6(保有していない可能性もある)
核戦争のリスクは日中間ではなく、イスラエルを巡る情勢の方がはるかに高い。
<参考>
海洋国家日本の21世紀地政学戦略(33)
△ 冷戦後の米欧の枠組みの変容(VOL23)
国際戦略研究者・山本英祐/地政学研究者・江田島孔明
「日本と台湾の海軍・空軍力により共同海上防衛を行い、中国軍の弾道ミサイル基地や海軍・空軍基地への『敵地攻撃侵攻能力』を緊急に増強すべきでしょう。
中国は新型”東風”弾道ミサイルや”紅鳥”巡航ミサイル”巨浪”潜水艦発射核弾頭ミサイルなどを開発し日本攻撃の照準を合わせています。
抑止力措置として、トマホークミサイルや対レーダーミサイル、F15Eストライクイーグル侵攻型攻撃機や空母導入が急がれます。
早急に日本は「核武装プログラム」を実行し、中国軍の台湾や日本へのミサイル攻撃に対しては、日本と台湾両軍で上海や北京への反撃攻撃プログラムを実行すべきです。
△ 中国と「恐怖の均衡」が必要 台湾行政院
二十五日の台湾夕刊各紙によると、台湾の游錫●・行政院長(首相)は同日、中国の軍事的脅威から台湾を守るためには、冷戦時代に米国と旧ソ連の間に築かれた「恐怖の均衡」のような状態を保つ必要があるとの認識を示した。
游氏は「(中国が)ミサイル百発を撃ち込むなら、少なくとも五十発撃ち返す。台北や高雄を攻撃したら、こちらも上海を攻撃する。反撃能力を備えてこそ台湾の安全が保たれる」と述べた。
△ 中国海軍増強に対抗する日本・台湾の軍事パートナーシップと海空軍力増強(山本英祐)
―中国海軍の原潜と核弾道ミサイル・巡航ミサイルの急激な増強の脅威―
中国海軍はキロ級ディーゼル推進潜水艦を12隻まで増強し、更には国産の新鋭原子力潜水艦の建造を進めています。
戦略原潜をアメリカ近海まで前進させ、ミサイル攻撃を行えBMD網を突破できます。これをやられてはたまりません。中国海軍は更に、台湾や日本列島を越えた1000キロを有事の海制覇ラインに指定し日本のシーレーンやグアム島の近海の制海権確保を狙っています。
中国海軍の新型094級SSBNは、東風ミサイルを改造した巨浪2型SLBMを搭載していますが、早ければ2005−2006年頃に実用化されるのではないかと言われています。
また中国はロシアから最新鋭のキロ級ディーゼル推進SSを購入し配備を開始しています。
尖閣諸島周辺での中国船舶の出没はこの潜水艦航路確保のためのものです。
米海軍太平洋艦隊哨戒偵察部隊司令部(米ハワイ州)を、米軍三沢基地(青森県)へ移転したのもこうした中国海軍潜水艦の索敵と攻撃の必要性の増大が背景にあると考えられます。
米海軍の対潜航空部隊は、海上自衛隊のP3C部隊と連携して中国海軍潜水艦部隊を索敵・攻撃することが目的です。
△ 自衛隊は中国軍の核巡航ミサイル『紅鳥』や『東風』増強に対抗したトマホークミサイルや核武装を行え
また中国は弾道ミサイルだけでなくトマホーク型の核巡航ミサイルの開発も進めており重大な脅威となっています。新型巡航ミサイル”紅鳥”新型の射程は3000キロで、命中精度は5メートルの範囲ということでこれはトマホーク型巡航ミサイルの射程2000キロを凌ぎます。
△ 読売新聞8月21日記事:中国、新型ミサイル実験に成功…射程3千キロか
【北京=佐伯聡士】華僑向け通信社「中国新聞社」(電子版)によると、中国航天(宇宙)科工集団公司の研究員は16日、トウ小平氏の生誕100周年を記念して、科学技術省など7機関が北京で開いた座談会で、「数日前、中国が開発した新型ミサイルの飛行実験に成功した」ことを明らかにした。(トウは「登」にオオザト)ミサイルの名称や射程など具体的な情報は一切明らかにしていないが、外交筋は「巡航ミサイル『紅鳥』の新型」との見方を強めている。中国軍は、台湾海峡有事をにらんで短距離弾道ミサイルの配備を進めており、今回の実験成功により巡航ミサイルの配備にも拍車がかかる可能性がある。
この研究者によると、ミサイルは極めて高い精度で目標に命中し、実験には曹剛川国防相が立ち会ったという。香港紙「明報」は、新型巡航ミサイルの射程は3000キロで、命中精度は5メートルの範囲としている。同紙によると、射程1500キロの紅鳥は1996年に配備されているという。
早急に自衛隊はアメリカからトマホークミサイルを調達し、配備開始を行わねばなりません。
△ 共同通信記事10月1日
敵地攻撃可能な兵器保有 新大綱へ最終報告に明記防衛庁の「防衛力の在り方検討会議」(議長・防衛庁長官)が今後の防衛力整備に向けてまとめた最終報告で、他国の弾道ミサイル発射基地などを攻撃する「対地攻撃能力」保有の必要性を明記、地対地ミサイル導入など具体的な装備構想を盛り込んでいることが30日、分かった。
政府はこれまで、敵基地攻撃は憲法上可能との見解を維持する一方、他国に脅威を与えないとの立場から、敵地を直接攻撃できる兵器は保有してこなかった。日本の防衛政策の原則である専守防衛を逸脱する可能性があり、論議を呼ぶのは必至だ。
最終報告は、政府が年末に策定する防衛大綱の素案となるが、対地攻撃能力の必要性には防衛庁内でも慎重論があり、公表されない見通しだ。
△ 中国海軍に対峙する海上自衛隊の海上戦力
対する海上自衛隊はキロ級よりも更にすぐれた「ゆうしお級」と「おやしお級」のディーゼル推進潜水艦を16隻も保有しています。
・ ゆうしお級SS
http://www.yuri.sakura.ne.jp/~right/equipment/jmsdf/ships/ss573-yuushioclass/ss573.html
・ おやしお級SS
http://www.geocities.co.jp/Technopolis-Mars/9578/oyashio.html
更には自衛隊は水中持続力を向上させた最新鋭のスターリング電気推進(AIP)搭載2900トンクラスSSを開発中です。
・ 2900トンSS
http://www.jda.go.jp/j/info/hyouka/2003/jizen/you03.pdf
また、アメリカは台湾海軍へ8隻のディーゼル推進潜水艦を供与することを発表しています。
中国軍の急激な核戦力増強に対抗し、今後、日本や台湾海軍の潜水艦への対地攻撃型ミサイル搭載と更には核弾頭の開発が必要となります。中国軍に対抗して核弾頭搭載のトマホークミサイル導入も不可欠です。
△ 太田述正コラム#169(2003.10.13)イスラエルの核への米国の協力
http://www.ohtan.net/column/200310/20031013.html
日本の核政策を考えるにあたって、以上の意味するところは重大です。まず、日本は核燃料も、スーパーコンピューターも、F-15も、(F-16をベースにして日米共同開発した)F-2も、そしてハープーンミサイル(水上艦艇、潜水艦、及びP-3Cに搭載済み)、も持っているということです。
特に、すべてハープーン搭載可能な潜水艦を16隻も持っていることが重要です。(イスラエルはわずか三隻です。)これらの潜水艦に、対地攻撃が可能なように改修されたハープーンを搭載して北朝鮮や北京の領海すれすれから、更には対潜水艦能力の劣る両国の領海内に侵入し、このハープーンを発射すれば、北朝鮮の平壌はもとより、中国の沿海都市、更には射程を若干延伸すれば北京や南京等を攻撃できます。
核弾頭を核実験なしで開発し、このハープーンに核弾頭を装備すれば、それだけで日本は有効な核戦力を保有できることになるわけです。(英国は潜水艦搭載核戦力しか持っていないことを思い起こしてください。)
また日本は、中国軍の核弾道ミサイルの増強に対抗して、中距離弾道ミサイル開発を進めねばなりません。
最も好ましいのは潜水艦搭載型を開発して、SLBM搭載原子力潜水艦(SSBN)あるいは核搭載トマホークミサイルを中国に対する第ニ撃攻撃戦力として配備し、中国の核攻撃に対する抑止力を保持すべきです。
またSSBNを配備する場合には、護衛随伴用の攻撃型原潜(SSN)の配備も平行して行うべきでしょう。
同じ島国の英国もICBMではなく、トライデント型核弾頭ミサイル搭載ヴァンガード級原子力潜水艦を配備し、核抑止力にしていることは参考となります。
また弾道ミサイル原潜ではないですが、攻撃型原潜(SSN)トラファルガー級にも英国は対地攻撃型トマホークミサイル(UGM-109 ブロックIIIトマホーク)を搭載し核攻撃力を付与しています。」
次回は、防衛庁の想定には無いが、私が考える、最も日中が開戦に至る可能性が高いと思われる、朝鮮半島情勢の今後を考察したい。北朝鮮崩壊後の半島情勢は日本にとって最大の戦争リスクとなる。中国の朝鮮半島への軍事介入は、楽浪郡の頃から朝鮮戦争まで、何回も前例がある。 次号に続く
(江田島孔明、Vol.36完)
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