◯ 世界史に見られるランドパワーとシーパワーの戦略 VOL44
江田島孔明
前号に引き続き、朝鮮半島の地政学的位置付けを検討してみたい。
地政学的に見た場合、半島は大陸のランドパワーの影響を直接受け、しかも国境線の防衛のために多大な陸軍を整備、維持するコストがかかり、かつ資源や市場にも恵まれない。
よって、「シーパワーは効率の観点から、防衛線を海上もしくは相手国の港の背後に置くべき」というのは歴史の鉄則だと考える。例として、アメリカは二度の世界大戦から冷戦を通じて、リムランドのイギリスと欧州大陸の間のドーバーに防衛線を置いた。
アメリカの世界戦略を考えた場合、韓半島を維持するのに、3万5千の陸軍を配備するだけの価値がないという判断から在韓米軍の縮小、撤退も時間の問題であろう。現時点では、北朝鮮を抱えている以上、韓国とは共同で対応せざるを得ない。この点で唯一「共通利益」が存在する。
そして、より重要な視点としては極東における戦略バランスの変化、すなわち、米ソ冷戦の終結だ。約40年前に日韓が国交を結んだ際の戦略条件とは、いうまでもなく、米ソの冷戦であり、日本としてはソ連とその傘下の北朝鮮の南進を防ぐため韓国を緩衝地帯、あるいは防波堤として育成する必要があった。これが日韓国交樹立の背景であり、真の戦略要因である。
これは、1910年に対露防波堤としての日韓併合をした状況と同じであり、半島をロシアに対する防波堤にするというのは、日本国の基本的地政学戦略といえよう。そして、この地政学戦略は「根本的に誤っていた」というのが20世紀の歴史から得られる最も大きな教訓だ。
韓国を植民地にしていた時代、帝国大学を含む社会インフラの整備に代表される半島への投資は常に国内より優先された。この間日本は未曾有の不況ともあいまって失業者があふれていたにもかかわらず。その上、国民は兵隊に取られ戦争も絶える事は無かった。
ここで考えなければいけないのは、北朝鮮の今後である。近未来、経済破綻により北朝鮮が崩壊した場合、在韓米軍撤退が現実化し、防衛線は対馬になり、人口七千万人の超反日国家が出現する。しかも、中国の韓国に対する影響力は増大することになり、そうした場合、日本と韓国は調停者を失い、必然的に利害が対立する(かって、李承晩は日本を攻めようとしてマッカーサーに阻止されたことを忘れてはいけない)。
この場合でも、米海軍と海上自衛隊で安全保障は十分に可能だと考える。逆に言えば、北朝鮮をある意味で「管理された危険」と位置づけ、現状を維持することが、逆説的ではあるが、アメリカの関心を極東に引きつけ、在韓米軍を正当化し、日米韓の枠組みを維持し、日韓の対立を調停するために必要になる。
これは北朝鮮が崩壊した場合の復旧や統一のコストを負担したくない日本や韓国、難民の流入や統一朝鮮出現を恐れる中国やロシア、日本や韓国へ影響力を行使したいアメリカの意向に合致する。すなわち、周辺関係国全てが、北朝鮮の現状維持による秩序の安定の恩恵を受けるということである。
何よりも、日本の近代におけるこの半島への容喙が、その後の大陸内部への防衛線拡大そして中ソ米との利害対立から破滅を生んだことを思い出す必要がある。更に、古代からの朝鮮半島の権益確保の苦闘(白村江の戦い、秀吉による文禄、慶長の役)は全て悲惨な結果に終わっている。このような歴史的視点から見て、「朝鮮半島は日本にとって正に鬼門」なのである。
なお、上述のような「半島を防波堤にする」という戦略は、ランドパワーのものであり、大日本帝国陸軍はマッキンダー理論の亜種であるハウスフォーファー理論に主導されたナチス・ドイツに傾倒し大陸へのめり込んでいったことが間違いであった。この背景には、日本の「アジア主義者」による東亜との連帯などといった妄想が存在した。このアジア主義者は、左右を問わず存在するから厄介だ。
土地などいくら確保しても不良債権化してしまい、維持コスト(安全保障コスト)がかかるだけというのはバブルを経験した我々には容易に理解できよう。
更に言えば、明治以来、陸上で防衛線を張るという戦略思想のドイツに学び、影響を受けた陸軍は、安全保障の観点(イギリスの植民地支配のような富の収奪が目的ではない)から朝鮮半島併合、満州国樹立、華北でのシナ事変と言うように、大陸内部へのめり込んでいくが、これは、防衛線の前方への展開を意味する。
日韓併合期間とは、日本にとって、最も不幸な時代であり、その引き金はこの日韓併合にあったのだ。参考までに、伊藤博文は日韓併合推進の責任者のように思われているが、実際は反対しており、保護国化で十分だと言っていたという。
私はそれすらも必要なかったと考える。後世の視点で冷静に考えると、シーパワーの観点から、「防衛線は対馬に置いて、釜山港を租借するだけ」で、優勢な日本海軍により安全保障は達成できたのではなかろうか。
伝統的なイギリスの国防戦略観を如実に示す、ドレイクの言葉「英国の防衛線は相手側大陸の港の背後にある。」を思い出していただきたい。「地政学指導理論の採用を誤ると国家、民族の破滅を招く」という実例を我々日本人は近代において持っているのである。この教訓は強調しきれないくらい重要である。ここを理解することこそが、必要不可欠な「歴史認識」だ。 次号に続く
<参考>
韓国外交通商省「駐日大使召還も」・竹島・教科書問題で
駐韓大使が一時帰国、竹島や教科書問題など協議へ
2005年03月14日11時39分
高野紀元・駐韓国大使が13日、日本に一時帰国した。日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)や日本の歴史教科書問題を巡って韓国内で急激に反発が高まっていることを受け、町村外相ら政府幹部と今後の対策を協議する。外交筋が明らかにした。
島根県議会が「竹島の日」条例案を16日に可決する可能性が高いことに加え、06年度から使う中学歴史教科書の検定結果発表を前に、「新しい歴史教科書をつくる会」主導で編集された教科書だとされる記述内容が11日、韓国内で報じられた。「植民統治を美化している」などと批判が高まり、韓国政府の強い対抗措置と国民感情のいっそうの悪化が予想されている。
高野大使はこうした情勢を政府に伝え、日韓の摩擦回避と関係修復に向けた政府レベルの対応策を話し合うと見られる。
<参考>
【ソウル=池田元博】韓国外交通商省関係者は14日、日韓が領有権を主張する竹島(韓国名・独島)問題や歴史教科書問題について、「(羅鍾一)駐日大使召還の可能性も念頭に様々な対応策を検討している」と述べた。16日に予定される島根県議会の「竹島の日」条例制定の動きなどを強くけん制し、日本側の善処を求めたものとみられる。
一方、韓日議員連盟は同日中に、歴史問題について日本側に抗議するため、議員代表団を日本に派遣すると発表した。
日韓の歴史問題については、李泰植・外交通商次官も14日、CBSラジオに電話出演し、島根県議会が本会議で条例案を採択した場合、「(駐日大使召還の)可能性を念頭に検討することがあり得る」と指摘。同時に、日本の歴史教科書問題についても憂慮の意を表明するとともに、「日本の政治が保守右傾化しているのは事実。戦後世代が政治を主導し、過去の歴史への認識が不足している」と非難した。 (12:55)
<参考>
国際情勢の分析を基にした、投資指南、安間伸氏のサイト、必見です。
それを教えちゃマズイだろ! http://www.amma1.com/
(江田島孔明、Vol.44完)
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